Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
循環器 循環器②

(S781)

心タンポナーデを機に経胸壁心エコー検査で発見できた悪性リンパ腫の心臓転移の1例

A case of metastatic cardiac maligrant lymphoma presenting with cardiac tamponade

遠藤 桂輔1, 丸尾 健2, 横田 佳代子1, 宮脇 大2, 筑地 日出文1, 福 康史2, 門田 一繁2

Keisuke ENDO1, Takeshi MARUO2, Kayoko YOKOTA1, Masaru MIYAWAKI2, Hidefumi CHIKUJI1, Yasushi FUKU2, Kazushige KADOTA2

1公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院臨床検査技術部, 2公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院循環器内科

1Clinical Technologist, Kurashiki Central Hospital, 2Cardiovascular Medicine, Kurashiki Central Hospital

キーワード :

【症例】
80代前半,女性.
【主訴】
労作時呼吸苦.既往歴:糖尿病,胃癌術後.
【現病歴】
2015年春,夜間に胸部不快感,呼吸苦を認めたため,近医受診.胸部X線にて心拡大と胸水の貯留を認め,心不全疑いにて当院に救急搬送された.
【経過】
救急にて施行した経胸壁心エコー検査(TTE)では,多量の心膜液貯留,右室の拡張早期の逸脱,下大静脈の拡大と呼吸性変動の低下を認め,心タンポナーデと判断し,心嚢穿刺が施行された.翌日,施行した詳細なTTEでは,三尖弁輪を中心に,右房,右室の前面に腫瘤状エコー像を認め,心筋に浸潤しているように観察された.腫瘤の性状は不均一で,等輝度と低輝度が混在していた.また,右冠動脈から栄養血管と思われる血流が観察された.腫瘤による三尖弁狭窄の所見は指摘できなかった.腫瘤の詳細な評価目的で施行した経食道心エコー検査では,腫瘤は右房,右室の他に,上行大動脈の背側,左房,左耳心,左上肺静脈にも認められた.悪性腫瘍を疑い,PET CTを施行すると,右房および冠状静脈洞を中心に広がる不整な腫瘤に対して強い塊状集積を認めた.また,気管分岐部,大動脈弓下,左腋窩,左胸筋間リンパ節,左鎖骨上窩などに多発性に腫大を認め,これらに対する異常集積も認められ,悪性リンパ腫が疑われた.左腋窩リンパ節生検にて,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断された.
【考察】
悪性リンパ腫による心臓腫瘍は,原発性より転移性が多く,心臓,心膜の転移が高頻度の悪性腫瘍の1つである.本症例のように,腫瘤が心膜に浸潤,心膜液が貯留し心タンポナーデが出現する頻度も高い.また,本症例は,縦隔の腫瘤から直接心膜,心筋へと浸潤したのではないかと考えられた.
【結語】
今回,心タンポナーデを機に経胸壁心エコー検査で発見できた悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する.