Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
循環器 循環器①

(S776)

完全房室ブロックと僧帽弁輪部膿瘍破裂を合併した感染性心内膜炎の一例

Infectious endocarditis with complete atrio-ventricular block and rupture of mitral annular abscess

相澤 芳裕, 斎藤 佑記, 門野 越, 早瀬 未紗, 永嶋 孝一, 加藤 真帆人, 廣 高史, 平山 篤志

Yoshihiro AIZAWA, Yuki SAITO, Koyuru MONNO, Misa HAYASE, Koichi NAGASHIMA, Mahoto KATO, Takafumi HIRO, Atsushi HIRAYAMA

日本大学板橋病院循環器内科

Division of Cardiology, Department of Medicine, Nihon University School of Medicine

キーワード :

【症例】
74歳 男性.
【主訴】
発熱,全身倦怠感,腰痛.
【現病歴】
2015年4月中旬から微熱と腰痛を認め,徐々に起立歩行が困難となった.5月中旬より食思不振が出現し38℃台の発熱が持続するようになり,当院救急外来を受診し精査加療目的に緊急入院となった.
【既往歴】
2型糖尿病,高血圧症,アルコール性肝硬変,陳旧性心筋梗塞,閉塞性動脈硬化症.2014年3月に感染性心内膜炎(IE)のため当科入院し,血液培養でStreptcoccus gordonii同定された.8週間の抗生剤投与で改善し疣贅の消失を確認して退院している.
【入院時所見】
体温38.8℃血圧118/70 mmHg,
胸部聴診上心尖部Levine2度の汎収縮期逆流性雑音とⅢ音を聴取し,両下肺野にcoarse crackleを聴取する.プロカルシトニン18.36 ng/ml,CRP 25.5 mg/dlと高度な炎症反応認め,血液培養でStreptococcus agalactiaeを認めた.心電図はHR60bpm,洞調律で明らかなST変化は認めなかった.経胸壁心エコーで僧帽弁弁輪部の瘤化とその破裂を認め,同部位から重度の僧帽弁閉鎖不全症を認めた.明らかな疣贅は認めなかったがIEによる弁破壊と考えられた.
【経過】
IEの既往,心エコー所見および血液培養より,IEの再燃と考えて入院時より抗生剤加療を開始した.第2病日に高度房室ブロックを認めたため一時ペーシングを挿入し,経食道心エコー施行した.心室中隔の菲薄化と三尖弁に付着する6mm程度の疣贅を認めた.IEによる僧帽弁弁輪部の破壊と心室中隔の菲薄化により感染が右心系にもおよび疣贅を形成したものと考えられた.また刺激伝導路障害を合併したことによる房室ブロックであると考えられた.外科的治療の適応と考えられたが,全身状態不良のため施行できず,第17病日永眠された.剖検の結果,穿孔を伴う僧帽弁輪部疣贅と三尖弁への疣贅の付着を認めた.
【考察】
連鎖球菌によるIEが再発した症例を経験した.初回IEは保存的加療で改善したが,今回は組織破壊が進行し重度の弁膜症と房室ブロックを合併したため救命できなかった.初回のIE後から今回までのおよそ1年間心エコーをフォローされておらず,今回のIEを早期発見できなかったことが最大の要因であると考えられる.合併症が多く易感染性と考えられる症例における発熱持続時には早期にIEを疑って精査していくことが重要であると考えられる.