Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
工学基礎 基礎(超音波計測一般)

(S773)

ソフトウェアによる非圧縮信号での画像構築

Image construction of a non-compressed signal by software

須藤 孝紀1, 近藤 祐司2, 村山 真実3, 吉田 智晴1

Takanori SUDOH1, Yuji KONDO2, Makoto MURAYAMA3, Tomoharu YOSHIDA1

1株式会社ISTソフトウェアシステム事業本部仙台システム部, 2東北大学大学院工学研究科, 3東杜シーテック株式会社テクニカルセクション.3

1System Enterprise Business Division Sendai System Department, IST-Software Co.,Ltd., 2Department of Electronic Engineering, Tohoku University, 3Technical Section. 3, Tohto C-tech Corporation

キーワード :

【背景】
CTやMRIで記録される画像は一般的に1画素ごとに65536階調(16bit幅)の情報量を持つが,超音波診断装置が出力する画像は1画素ごとに256階調(8bit幅)の情報量しか持たない.超音波診断装置で16bit幅の情報量で画像ファイルを出力することを考える場合,信号の受信から画像出力に至る全ての処理を16bit幅以上のデータで行わなければならない.ハードウェア構築でデータ量を増やすには多大なコストが必要となるが,ソフトウェア構築では比較的容易に実現が可能である.
また,ディスプレイ装置が表現できるのは256階調であるため,それを上回る受信信号の強弱の幅は同時に表示できない.そのため一般にLOG圧縮を施すことにより信号を非線形に圧縮し,広い範囲の信号を同時に表示できるよう調整されているが,実際にはこの段階で情報の切り捨てが発生している.従って,DICOM等に保存された画像データはそもそも情報欠落を伴ったものである.通常LOG圧縮は信号処理の早い段階で行われるが,画像表示の直前までLOG圧縮を行わないことで,情報の欠落がなく信号処理を行うことができると考えている.
そこで,信号を圧縮することなくソフトウェアによる画像構築を行い,表示の最終段において表示可能な形態に処理する方法について検討した.
【方法】
(1)市販のPCを用いて,ソフトウェアで基本的な信号処理を行い画像表示するシステムを構築した.扱うデータ量は,32bitの浮動小数点数を用いた.従来通り整相加算→検波→LOG圧縮→走査変換の流れによる前LOGの手法と,整相加算→検波→走査変換→LOG圧縮の流れによる後LOGの手法で画像表示を行い,どちらの方式でも同じ画像が生成されることを確認する.
(2)後LOGでの画像構築において,ウィンドウレベル変換を行い,選択したレベルの信号を表示する機能を実装した.今回のシステムでは圧縮していない信号に対して表示レベルを指定することができる.振幅差がある近接した2点からの信号を入力データとし,ウィンドウレベルを調整することで2点を選択して描出することが可能であることを確認する.
【結果】
前LOG,後LOGの2種類の方法による画像構築を全てソフトウェアで実装し,テスト信号条件を含めて様々な条件設定において,ほぼリアルタイムにその効果を確認できるシステムを作成した.
(1)前LOGと後LOGで出力画像を比較した結果,同一の圧縮条件においては,点の大きさは深さ方向ではほぼ同じであったが,横方向には前LOGがより細かく描出された.
(2)後LOGにおいてはウィンドウレベルを適切に設定することで,振幅差が数千倍であっても2点をそれぞれ最も細かく表示することが可能であった.
【まとめと考察】
前LOGと後LOGで表示画像に微妙な差異があることが確認された.その要因として処理の前段階において情報の欠落を伴う前LOGでは,走査変換時に後LOGとは異なるデータが生成され,これが最終画像に影響しているものと思われる.従って,整相加算条件やライン密度等によっても差異は異なるものと思われ,今後の検討が必要である.一方で,非圧縮の情報を扱うことにより,振幅差が大きい信号でも選択的に表示可能であることを確認した.受信信号を圧縮しない状態で画像構築を行っているため,後LOGの手法により高精度の画像が表示できる可能性を見出すことができた.
一般的なCPUでは処理速度に制約があるが,超並列マイクロプロセッサ(1)を使用することによって,ソフトウェア処理による非圧縮画像構築のリアルタイム実装が可能と思われる.
【参考文献】
(1)人見他:日超医第88回学術集会,88-基礎-044,2015