Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
その他

(S761)

ポケット型超音波診断装置を用いた主に医学生を対象とした超音波臨床実習について

Clinical Training of Ultrasonography using Pocket-size Ultrasound Scanner

中田 典生, 西岡 真樹子, 太田 智行, 福田 国彦

Norio NAKATA, Makiko NISHIOKA, Tomoyuki OHTA, Kunihiko FUKUDA

東京慈恵会医科大学放射線医学講座

Department of Radiology, The Jikei University, School of Medicine

キーワード :

【目的】
本学放射線医学講座では,主に医学生を対象とした超音波診断学の臨床実習において平成25年度までは,従来のカート型超音波診断装置のみを用いて臨床実習を実施していた.平成26年度よりポケット型超音波診断装置を導入して従来の装置と併用して臨床実習を開始した.今回,平成26年度から実施した新カリキュラムにおける感想アンケート調査をまとめたのでその結果を検討し報告する.
【対象】
本学放射線医学講座にて平成26年4月7日から平成27年9月2日までに超音波診断学の臨床実習が施行させた医学部5年生140名,他大学(米国ヒューストン大6年生)1名,本学附属病院研修医(2年目)2名の合計143名を対象とした.
【方法】
超音波診断学の臨床実習は110分実施され,実習前に超音波装置を扱う際の諸注意と腹部超音波検査の際の注意点などを講義した.講義内容は,1)探触子の種類(リニア,セクター,コンベックス,経腟,三次元プローベ)とその取り扱い,破損防止のための注意事項,2)腹部検査の際の絶食指示の重要性,3)エコーゼリーの必要性と超音波診断の簡単な原理の説明などを中心に行った.講義後に学生同士(研修医同士)の腹部について,主に肝臓,胆嚢,膵臓,脾臓,腎臓の描出を指導して実際にポケット型超音波装置(GE Vscan 1台ないし2台)と通常のカート型超音波装置を用いて実習を行った.なお平成26年4月から平成27年3月まではGE Vscan1.2(セクタープローブのみの装置),平成27年4月からは同装置に加え,Vscan Dual Probeも併用した.Vscan Dual Probeを用いた場合は,腹部に加えて甲状腺,頸動静脈などの表在超音波検査も実習に一部取り入れた.実習終了後に,感想アンケート文(短文)を3名で1文章ないしは各1名につき1文章作成させた.
【結果】
合計69編の感想アンケート文を集計した.本実習について有用性を感じた,勉強になったなどの肯定的意見は44編(63.8%)に認められた.また超音波検査には熟練が必要であるなど,今後の学習動機の向上に貢献した意見は27編(39.1%)に認められた.一方画面が小さい,実習時間が足りないなどの否定的意見は17編(24.6%)に認められた.
【考察】
人口の高齢化が急速に進む日本では,75歳以上の後期高齢者数が2050年にピークの2,500万人に達し,2010年と同じ1,500万人程度になるのは今世紀末と予測される.このような現実に対し,厳しい国家財政のため病院数や病床数の増加は期待できない.従ってかかりつけ医による在宅医療が必然的に全国で増えることが予想される.訪問診療で簡便に施行可能な画像診断の代表が超音波診断検査である.そこで本学では医学生に対する超音波診断学の教育に力を入れはじめている.従来のカート型の超音波診断装置は持ち運びが困難であるため,今後はポケット型やタブレット型の超音波診断装置が訪問診療での画像診断の主流となると考えられている.また今回の検討結果を踏まえると,日本超音波医学会として超音波診断を教育する指導者をもっと養成するシステムを整備する必要があると考えられるが,会員以外の在宅医療を担う医師・医学生に対しても広く実践的な超音波診断の教育を広めていく活動の必要性を痛感した.
【結論】
今回のアンケート結果が示唆する結論は,超音波診断の臨床実習は重要であり,現状では医学生,卒後教育とも超音波教育の時間が不足していることが判明した.