Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
運動器 運動器②

(S751)

乾癬性関節炎および乾癬患者の関節エコーでの末梢関節における滑膜炎の有病率調査

The prevalence of ultrasonographic synovitis and enthesopathy in patients with psoriasis and psoriatic arthritis

橋本 あゆみ1, 岡野 匡志2, 武田 節子1, 杉岡 優子3, 真本 健司2, 小池 達也3, 4, 乾 健太郎2

Ayumi HASHIMOTO1, Tadashi OKANO2, Setsuko TAKEDA1, Yuko SUGIOKA3, Kenji MAMOTO2, Tatsuya KOIKE3, 4, Kentaro INUI2

1公立大学法人大阪市立大学医学部附属病院中央臨床検査部, 2大阪市立大学大学院医学研究科整形外科, 3大阪市立大学大学院医学研究科高齢者運動器変性疾患制御講座, 4白浜医療福祉財団骨リウマチ疾患探索研究所整形外科

1Central Clinical Laboratory, Osaka City University Hospital, 2Department of Orthopedic Surgery, Osaka City University Graduate School of Medicine, 3Center for Senile Degenerative Disorders, Osaka City University Graduate School of Medicine, 4Orthopedic Surgery, Search Institute for Bone and Arthritis Disease

キーワード :

【はじめに】
乾癬性関節炎は皮膚疾患である乾癬に関節炎や付着部炎症状を合併した病態であり,乾癬患者の約10%程度にみられる.そのうち15%程度は関節症状が皮膚症状に先行し,診断に難渋する場合もある.従来,関節炎や付着部炎の評価は理学所見での圧痛や腫脹の有無によって行われてきたが,近年の画像診断技術の進歩によって関節炎や付着部炎の客観的な評価ができるだけでなく,早期診断や無症候性の炎症を検出することも可能となってきた.そこで今回われわれは乾癬性関節炎および乾癬患者の末梢関節における関節炎の有病率を関節エコーで評価した.
【対象と方法】
対象症例は当院皮膚科で乾癬と診断されている31例(男性16例,女性15例)であり,理学所見による関節症状のある乾癬性関節炎患者が19例,関節症状のない乾癬患者が12例であった.超音波検査は両手指のMCP関節・PIP関節・DIP関節および手関節の橈側・正中・尺側の背側縦断像を日立アロカメディカル社HI VISION Ascendusで18MHzリニアプローブを用いておこなった.それぞれの関節でグレイスケール(GS)およびパワードプラ(PD)所見を半定量法を用いてGrade0-3で評価した.
【結果】
乾癬性関節炎患者19例中GSでは84.2%(16例)・PDは78.9%(15例)で,いずれかの末梢関節に陽性所見が認められた.関節炎所見は手関節・DIP関節・MCP関節・PIP関節の順に陽性所見が多く観察された.最大のPD GradeはGrade 3が7例・Grade 2が3例・Grade 1が5例であった.臨床的に関節症状のない乾癬患者12例では,GSで58.3%(7例)・PDで25%(3例)に陽性所見が認められた.PD陽性関節がみられた乾癬患者のGradeはいずれもGrade1であった.
【考察】
乾癬性関節炎患者では関節エコー検査によって,末梢関節の活動性滑膜炎が高率に認められ,約半数でGrade 2以上の関節炎が検出された.また,関節炎症状を伴わない乾癬患者でもサブクリニカルな炎症性滑膜炎が検出されたが,いずれもGrade 1と炎症の程度は軽度であった.関節症状の有無にかかわらず,乾癬患者において関節エコー検査は関節炎の状態を正確に評価する有用なツールであると考えられた.