Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
運動器 運動器②

(S749)

大腿四頭筋・膝蓋腱付着部の厚さとX線靭帯骨棘

Thickness and enthesophytes of quadiriceps femoris muscle and patellar tendon

河内 奈々子1, 河野 慎1, 藤野 愛弓1, 西野 聖吾2, 松田 夕子2, 川島 朝子2, 田中 雄一2, 城戸 聡3, 加茂 健太3

Nanako KOHCHI1, Shin KAWANO1, Ayumi FUJINO1, Seigo NISHINO2, Yuko MATUDA2, Asako KAWASHIMA2, Yuichi TANAKA2, Satoshi KIDO3, Kenta KAMO3

1綜合病院山口赤十字病院リハビリテーション技術課, 2綜合病院山口赤十字病院検査部, 3綜合病院山口赤十字病院整形外科

1Rehabilitation, Yamaguchi Red Cross Hospital, 2Clinical Examination, Yamaguchi Red Cross Hospital, 3Orthopaedics Surgery, Yamaguchi Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
超音波検査はリウマチ分野では関節炎や腱付着部炎の評価に用いられている.また,理学療法の分野でも機能解剖や動態の評価などに使用され,一部で臨床応用され始めている.踵骨付着部において腱の厚さと靭帯骨棘発現の病態は多く報告されているが,大腿四頭筋・膝蓋腱の靭帯骨棘の発現や大腿四頭筋腱・膝蓋腱の厚さに関する報告は少ない.膝蓋骨近位の靭帯骨棘は大腿四頭筋断裂との関連が報告され,靭帯骨棘の発現率は16〜62%と報告されている.膝蓋腱膝蓋骨付着部の靭帯骨棘はJumper’s kneeの圧痛部位にあたり,脛骨付着部の靭帯骨棘はオスグッド・シュラッター病の罹患部位である.
今回,大腿四頭筋と膝蓋腱付着部の靭帯骨棘と腱の厚さの関係を明らかにすることを目的とした.
【対象・方法】
2014年6月から2015年8月,関節リウマチ,脊椎関節炎が疑われ,当院整形外科受診した患者の中で受診時未診断の患者を対象とした.腱の肥厚をきたし得る関節リウマチ,脊椎関節炎など膠原病と診断された者,踵骨部付着部炎(アキレス腱付着部炎と足底腱膜炎)を除外した.66名が対象となり,その中で両膝側面,両足関節側面の単純X線検査,下肢腱付着部の超音波検査が施行された者は40名だった.したがって評価部位は大腿四頭筋腱付着部80部位,膝蓋腱膝蓋骨付着部80部位,膝蓋腱脛骨付着部80部位であった.
【結果】
平均年齢は54.1歳(±18.6)であり,男性12名,女性28名だった.靭帯骨棘の発現率は大腿四頭筋腱付着部では35.0%(28/80),膝蓋腱膝蓋骨付着部では5.0%(4/80),膝蓋骨脛骨付着部では8.6%(7/80)だった.靭帯骨棘の有無にて腱の厚さを比較し,大腿四頭筋腱付着部では靭帯骨棘が有る群では5.7mm,無い群では5.2mmと有意に靭帯骨棘がある群が厚かった(p<0.05).膝蓋腱付着部では有意な差を認めなかった.膝蓋腱近位は3.3mm,膝蓋腱遠位は3.8mmと有意に遠位側が厚かった(p<0.01).
【考察】
本調査では大腿四頭筋腱付着部では有意に靭帯骨棘がある群が厚かった.膝蓋腱付着部は大腿四頭筋腱と比較して靭帯骨棘の発現率が低く,靭帯骨棘の有無により有意差を認めなかった.四頭筋腱付着部においては靭帯骨棘の有無が腱肥厚に関連することが示唆された.また靭帯骨棘の有無に関係なく膝蓋骨近位よりも有意に遠位側が厚いという結果であった.
靭帯骨棘の発現因子としては脊椎関節炎や関節リウマチなどの疾患,スポーツ活動や加齢などが挙げられている.踵骨靭帯骨棘は踵着地時の衝撃(圧迫)と腱膜の緊張による牽引力が加わった反応性変化であると考えられている.Jumper’s kneeは膝伸展機構への過負荷が腱付着部あるいは腱実質における微細損傷をもたらし,腱の肥厚・変性を認める.またBackman.Cらによる動物実験において高強度の伸張性負荷により腱の肥厚を認めたことを報告している.大腿四頭筋腱や膝蓋腱に対する過負荷が靭帯骨棘の発現や腱肥厚に関係していると考えられる.
脊椎関節炎の腱付着部の評価では膝蓋腱の近位と遠位のカットオフ値は4.0mmと同じ数字が用いられている.しかし,本調査では遠位側が厚くなっていた.膝蓋腱にかかる張力負荷は不均一で関節角度やスポーツ,動作,運動の違いに影響される可能性が考えられる.また日本人は和式生活特有の膝関節深屈曲を伴う動作が日常的に行われることで膝蓋腱に持続的な張力が加わっていることも考えられる.
臨床において筋緊張や運動パターンの評価は非常に主観的で個々のスキルや経験によって左右されがちだが,客観的な評価を可能にする超音波検査は病態把握において非常に有用なツールであると考える.