Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
運動器 運動器②

(S748)

結節性筋膜炎の超音波像の比較検討

Analysis of Ultrasonographic findings on Nodular Fasciitis

成田 啓一1, 西村 亜希子1, 金田 智1, 新川 宏樹2

Keiichi NARITA1, Akiko NISHIMURA1, Satoshi KANEDA1, Hiroki ARAKAWA2

1東京都済生会中央病院放射線科, 2東京都済生会中央病院皮膚科

1Radiology, Saiseikai Central Hospital, 2Dermatology, Saiseikai Central Hospital

キーワード :

【背景】
結節性筋膜炎は主に皮下深部に発生する比較的稀な良性の腫瘍類似病変である.外傷が契機となることもあるが,原因は不明である.20代から40代に多く,性差はない.上肢や頸部,体幹部に多いとされている.急性期には線維芽細胞や筋線維芽細胞の増生があり,経過とともに膠原線維の多い瘢痕組織に変化する.臨床的には急速に増大する皮下の腫瘤性病変で,半数程度に軽度の疼痛や圧痛がある.しばしば悪性軟部腫瘍との鑑別を要することがある.診断も兼ねて切除されることが多いが,自然退縮することもあるので疼痛などの症状が乏しければ経過観察も可能な疾患である.これまで結節性筋膜炎の超音波所見に関するまとまった報告が乏しいため,当院における超音波像を比較検討した.
【対象と方法】
2005年8月から2015年12月まで当院で表在超音波検査を行ったのちに腫瘍切除術あるいは腫瘍生検を実施し,結節性筋膜炎と診断された7症例(男性4例,女性3例,31-71歳,平均年齢47.1±14.6歳)を対象とした.これらの超音波所見として,①形状,②境界,③内部性状,④内部および辺縁の血流,⑤辺縁高エコー域,⑥局在(深さ),⑦筋膜との関連性,に注目した.病理組織標本との対比や文献的考察も加え,診断に有用な所見について検討した.
【結果と考察】
発生部位の内訳は上肢2例,頸部1例,体幹部1例,下腿3例であった.サイズは10-27mmで平均14.6±5.6mmであった.形状は楕円形が4例,分葉形が3例で,境界は5例が明瞭で,2例が不明瞭であった.内部性状に関しては過去に報告されている3パターンのどれかに合致し,均一な低エコーが3例,中心部が低エコーで辺縁に等〜高エコー域が混在しているものが3例で,内部が等〜高エコーで粉瘤様の所見を呈するものが1例である.均一な低エコーを呈する病変では病理学的に粘液成分が豊富であった.血流についてはカラードップラーで観察し,内部に血流信号を認めるものが2例,辺縁に血流信号を認めるものが3例で,残り2例は内部にも辺縁にも血流を確認できなかった.腫瘤の辺縁が高エコーを呈する病変は2例で,どちらも境界が不明瞭で,辺縁に血流信号を認める症例であった.周囲への炎症細胞浸潤などを反映して,これらの所見をとるものと推察された.局在に関しては皮下脂肪織の全層を占拠するか深部に位置し,浅部にのみ位置する症例は認めなかった.全例で皮下の浅在筋膜と接しており,特に1例は腫瘤が筋膜に沿って紡錘状の形態であった.これはMRIでfascial tail signとして報告されている所見に類似しており,超音波検査でも診断の一助となる可能性がある.
【結語】
皮下深部に位置し浅在筋膜と接する所見が全例に認められた.楕円形あるいは分葉状の形態をとり,内部性状は3パターン(均一な低エコー,中心部が低エコーで辺縁が等〜高エコー,粉瘤様)に分類される.境界は明瞭な病変が多いが,周囲への炎症細胞浸潤などにより境界不明瞭となることもある.