Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
脳神経・眼科

(S743)

小児頭蓋骨骨折における超音波検査の有用性とpitfall

Usefulness and pitfall of ultrasonography for the diagnosis of skull fracture in children

野中 航仁, 山下 信一郎, 市橋 光

Kazuhito NONAKA, Shinichiro YAMASHITA, Ko ICHIHASHI

自治医科大学附属さいたま医療センター小児科

Department of Pediatrics, Saitama Medical Center Jichi Medical University

キーワード :

【はじめに】
頭部外傷は小児の外傷の中で頻度が高く,頭蓋骨骨折および頭蓋内出血の診断のgold standardはCT検査とされている.一方,神経学的異常所見のない頭皮下血腫のみを主訴として受診される小児患者も少なくなく,頭部CT検査による放射線被曝や検査時の鎮静薬使用の問題などから,軽症頭部外傷における画像検査の適応についてはしばしば議論される.
近年,救急医療分野における超音波検査が広まっており,小児の頭蓋骨骨折診断に対する有用性も指摘されている.当院でも頭皮下血腫を有する症例に対して超音波検査を積極的におこなっており,その有用性と問題点について自施設での症例を基に検討したので報告する.
【症例】
特に既往のない生後11か月の女児.受診3日前にベビーカーからアスファルトの地面に墜落した.受傷後も意識は清明で普段と変わった様子なく元気に過ごしていた.受診当日に右側頭部の柔らかい腫瘤に気付かれ,当院を受診した.頭皮下血腫が疑われ,超音波検査を施行したが,頭蓋骨骨折は描出できなかった.頭蓋骨単純X線検査で右後頭部に骨折線を認め,頭蓋骨骨折と診断した.X線検査後に超音波検査でも骨折線を確認し,大泉門をエコーウィンドウとして観察した頭蓋内に明らかな血腫やmidline shiftがないことを確認した.単発の頭蓋骨骨折に伴う頭皮下血腫で,神経学的異常所見なく,受傷時より増悪傾向もないため,外来フォローの方針とした.
【考察】
超音波検査での頭蓋骨骨折診断について,2013年のJoniらの報告では感度は88%,特異度は97%と良好な結果が示されている.今回,超音波検査で診断できなかった要因としては,骨折線が血腫の中心部から離れていたことが考えられた.超音波検査での骨折線の描出は難しくないが,広範囲なスクリーニングには向かず,臨床所見より骨折を疑った際には病変の周囲まで入念に観察をおこなうことが必要であると考えられた.
【結論】
小児頭蓋骨骨折の描出に超音波検査は有用であるが,血腫から離れた部位に存在する頭蓋骨骨折の診断には限界がある.