Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
脳神経・眼科

(S743)

黄連解毒湯内服後の家兎眼窩内動脈の血流動態の検討

Study of hemodynamics in rabbit orbital arteries after systemic Oren-gedoku-to

山田 利津子1, 5, 高山 篤也4, 竹林 英一郎2, 山田 誠一3

Ritsuko YAMADA1, 5, Atsuya TAKAYAMA4, Ei-ichiro TAKEBAYASHI2, Sei-ichi YAMADA3

1聖マリアンナ医科大学アイソトープ研究室, 2竹林眼科医院眼科, 3東京医科歯科大学国際環境寄生虫病学講座, 4景翠会金沢病院整形外科, 5景翠会金沢病院眼科

1Radioisotop Institute, St. Marianna University School of Medicine, 2Ophthalmology, Takebayashi Eye Clinic, 3Section of Environmental Parasitology, Department of International Health Development, Division of Public Health, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Tokyo Medical and Dental University, 4Orthopedics, Keisui-kai Kanazawa Hospital, 5Ophthalmology, Keisui-kai Kanazawa Hoapital

キーワード :

【目的】
黄連解毒湯(Huang-Lian-Jie-Du-Tang)は黄芩,山梔子,黄連,黄柏を構成成分とする漢方薬であり,適応証は実証熱証,気上衝である.構成生薬は「苦寒」の薬味薬性であるため,寒冷解熱作用があり,炎症や充血などを伴った諸症状に効能がある.近年,敗血症の防止,虚血再還流モデルでの神経細胞アポトーシスの抑制,抗活性酸素作用,肝細胞癌への治療効果他が報告され,新たな展開が期待されている.眼科領域では,止血効果あるいは出血の吸収促進,ベーチェット病他ぶどう膜炎の治療薬として有用である.今回は,黄連解毒湯の眼循環への効果を家兎眼窩内動脈の流速変動を超音波パルスドプラ法で検討した.
【対象と方法】
雌Dutch種家兎18匹(体重2.5±0.4kg)を対象とした.内14匹は黄連解毒湯(ツムラ)原末0.25g/kgを,4匹は0.025g/kgを単回内服投与した.1時間から14日後に,網膜中心動脈(CRA),短後毛様動脈(SPCA),外眼動脈(OA)の平均流速(Vmean),末梢循環抵抗指数(RI)を測定し,投与前値と比較した.超音波診断装置はSSA-260(東芝)を用いた.電圧変動率の類似法で,Vmean, RIの変動率を算出して検討した.用量反応性は今回,内服2時間後の平均流速の変動率(δVmean), Resistance Indexの変動率(δRI)についてロジステイック回帰分析をおこなって検討した有意差検定はKruskal-Wallis検定とMann-WhitneyのU検定を用いた.危険率0.05以下を有意水準とした.
【結果】
0.25g/kg投与群のVmeanはSPCA,OAは2,4,6時間後に有意な(各々SPCA:p<0.0500,p<0.0043,p<0.0019,OA:p<0.0032,p<0.0500,p<0.0035)上昇を示した.RIは有意な変動を示さなかった.SPCAのVmean, RI変動率ならびにOAのRI変動率は有意な用量反応性を示した.
【考察】
黄連解毒湯は黄連解毒湯及び黄芩はインターロイキン1で惹起した眼内炎を抑制することが報告され,DSS大腸炎マウスT細胞のCD11a発現率増加を抑制するなど抗炎症効果および免疫系亢進効果があり,ハプテン特異的リンパ球の増殖抑制を介して接触過敏反応を抑制することが報告されている.閉塞性血管炎を病態とする眼炎症が多く,抗炎症効果とともに必要十分な血流量が保持されることが視力予後を左右する.今回,内服後の眼窩内動脈のVmeanは上昇し,RIは変動せず,血流量は上昇することが示唆された.以上のことから黄連解毒湯内服により,2-4時間後を頂値とした血流量の増加と脈絡膜,網膜外層・内層の循環改善が期待される可能性が示唆された.