Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
腎・泌尿器

(S740)

ロボット支援前立腺全摘除術における術中超音波ナビゲーションの役割

Clinical implication of transrectal ultrasound during robotic assisted prostatectomy

鴨井 和実, 沖原 宏治, 山田 恭弘, 内藤 泰行, 本郷 文弥, 金沢 元洪, 牛嶋 壮, 浮村 理

Kazumi KAMOI, Koji OKIHARA, Yasuhiro YAMADA, Yasuyuki NAITOH, Fumiya HONGO, Motohiro KANAZAWA, So USHIJIMA, Osamu UKIMURA

京都府立医科大学泌尿器科

Department of Urology, Kyoto Prefectural University of Medicine

キーワード :

【背景】
ロボット支援前立腺全摘除術(RARP)は,従来の手術法に比べてより根治性,尿禁制を含む機能温存を目指した手術が行われるようになってきた.しかし,その導入初期における習熟曲線の途上では,出血や吻合部縫合不全といった合併症が問題となる.さらに,よりよい術後の機能維持(尿禁制と性機能)を目指すために,極力電気メスの使用を抑えて前立腺周囲の神経を温存することが望まれる.
経直腸的超音波(TRUS)ナビゲーションは開腹手術や腹腔鏡下手術においても用いられ,その有用性が報告されてきた.RARPのためのDa Vinciシステムには,3D内視鏡画面とともに超音波画像やCT/MRI画像を術野に表示するためのTile Proという機能があり,ケーブルの接続により簡単にリアルタイム超音波画像を術野に提供することができる(図).この機能を用いて術中に正確な切離面と臓器後面の情報を提供し,安全かつ確実な手術をガイドするナビゲーションが可能になる.我々はこのリアルタイムTRUSナビゲーションに加えて前立腺癌病巣を3次元的に表示する3D-Cancer Mappingという技術を用いて癌病巣部位の切除面をより安全に確保する方法を開発した.この技術によってRARP導入期における切除断端陰性確保の習熟曲線を検討した.
【方法】
TRUSナビゲーションは,指型探触子を直腸内に挿入して大腿部で固定し,助手が先端を操作して前立腺および周囲組織の縦断走査画像を得た.3D-Cancer Mapは術前に3T-multiparametric MRIで認められる癌病巣と生検情報から作成した.統合ナビゲーションは骨盤底筋膜の展開時,膀胱頸部切断時,前立腺側面と後面の剥離および尖部の切断時に用い,最適な剥離層を決定した.
【結果】
統合ナビゲーション導入前と比較して導入後は有意に外科的断端陽性率が低下した.TRUSナビゲーションのみの症例と統合ナビゲーションとの比較では,導入前期に有意な外科的断端陽性率の低下が示されたが,導入後期では両群ともに低い断端陽性率が得られた.予防的1Pad以内の尿禁制の改善は両群共に3か月以内で90%以上の症例において認められた.
【結論】
RARPにおける統合ナビゲーションは正しい切除面を術者に提示することにより,外科的切除断端陽性率を低下させると考えられた.