Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
腎・泌尿器

(S738)

左腎の皮質径は早期腎障害を反映する

Left renal cortical thickness measured by ultrasound can predict early progression of chronic kidney disease

井山 拓治, 高田 知朗, 孝田 雅彦, 岡本 敏明, 三好 謙一, 福井 毅顕, 的野 智光, 杉原 誉明, 宗村 千潮, 磯本 一

Takuji IYAMA, Tomoaki TAKATA, Masahiko KODA, Toshiaki OKAMOTO, Kenichi MIYOSHI, Takeaki HUKUI, Tomomitsu MATONO, Takaaki SUGIHARA, Chishio MUNEMURA, Hajime ISOMOTO

鳥取大学医学部機能病態内科学

Multidisiplinary Internal Medicine, Tottori University

キーワード :

【背景】
進行した慢性腎臓病においては腎萎縮が生じ,腎長径は腎機能と相関する.しかし,慢性腎臓病の進行に伴う腎皮質や髄質の変化に関する知見は乏しい.そこで今回,腎機能と腎皮質および髄質の変化ならびにその左右差について検討した.
【方法】
当科通院患者158名および健常人18名を対象として腹部超音波検査を施行し,B-modeで腎長径・皮質径・髄質径を左右それぞれ測定した.皮質径および髄質径は3カ所で測定し平均値を使用,皮質径と髄質径の和を腎実質径として評価した.被験者を腎機能に応じて4群に分け(group1,eGFR>90; group 2,60<eGFR<90; group 3,30<eGFR<60; group 4,<30)群間で長径・皮質径・髄質径・実質径を比較した.
【結果】
腎長径,皮質径および実質径は腎機能の悪化に伴って有意に低下した.髄質径はGroup4で有意に低下したが,Group1からGroup3では差がみられなかった.腎機能を従属変数として,性別・年齢・腎長径・皮質径・髄質径・実質径を独立変数として多変量解析を行ったところ,腎長径が腎機能に最も関連していた.しかしGroup1からGroup3で同様に多変量解析を行ったところ,皮質径が腎機能と最も関連していた.左右皮質比(左皮質径/右皮質径)は,腎機能の低下に伴って有意に低下した.
【考察】
腎障害の進行に伴って長径と皮質径の萎縮がみられた.早期腎障害においては,皮質径の方が長径よりも強く腎機能に関連していた.一方で髄質径は初期には保たれ,進行した腎不全でのみ萎縮がみられた.さらに,腎障害の進行に伴う腎皮質の萎縮は左腎でより顕著であった.腎不全の進行に伴い皮質と髄質では血流分布が変化する.すなわち,皮質表層の血流は早期に障害されるのに対し皮髄境界・髄質の灌流は初期には保たれる.皮質と髄質にみられた萎縮の進行の違いは血流分布の変化を反映していると考えられる.左腎において顕著にみられた皮質の萎縮は,左右腎に到達する灌流圧が異なるため,解剖学的な腎動脈長の左右差が影響しているものと考えられた.
【結語】
腎長径と皮質径は腎機能とよく相関する.特に,左腎皮質径は早期腎障害を反映する.