Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
血管 血管③

(S736)

当院で治療を行った若年性腎動脈狭窄症の経過観察について

Follow-up examination of young patients with renovascular hypertension after PTRA

三木 未佳1, 三木 俊1, 森 菜緒子2, 高瀬 圭2

Mika MIKI1, Takashi MIKI1, Naoko MORI2, Kei TAKASE2

1東北大学病院生理検査センター, 2同病院放射線診断科

1Physiological Center, Tohoku University Hospital, 2Diadnostic Radiology, Tohoku University Hospital

キーワード :

【はじめに】
腎血管性高血圧症(renovascular hypertension)は,中高年者と若年者で原因となる疾患が異なる.若年者の腎動脈狭窄症の原因としては,線維筋性異形成(fibromuscular dysplasia:FMD)が最も多く,ついで高安動脈炎によるものが多いとされている.また,FMDは腎動脈中部より末梢,高安動脈炎は腎動脈起始部に病変を持つため,基礎疾患に注意して検査を施行することが重要である.FMDの治療は,経皮的腎動脈形成術(percutaneous transluminal renal angioplasty:PTRA)が一般的であるが,再狭窄を起こし,繰り返しPTRAが必要な症例もある.動脈硬化におけるカテーテル手術(PTRA及びステント留置術)の治療効果に関しての報告はあるが,若年性の腎動脈狭窄に関しての報告は少ない.そこで今回私たちは,当院における若年性腎動脈狭窄症例のPTRA後のフォローアップにおいて,血圧の改善効果と再PTRAの割合について検討した.
【対象】
2015年1月〜12月の1年間に腎動脈エコーを施行したのべ924人中,これまでにPTRAを施行し,フォローを受けている人116人から,腎動脈狭窄の原因が動脈硬化性によるものを除いた25名を解析対象とした.
【方法】
対象の25名について,平均年齢,男女比,腎動脈狭窄の原因,PTRA後降圧薬服用の有無,再PTRA施行の割合について解析した.
【結果】
年齢16〜51歳平均30.7歳.男女比 1:3.2.腎動脈狭窄の原因はFMDが20件(80%),高安動脈炎が5件(20%)であった.PTRA後は,14例(56%)で血圧が改善し,降圧薬の服用なく経過観察している.当院で腎動脈エコーがルーチン化されてからPTRAを施行した症例で,フォロー中に再狭窄が示唆され,再PTRAを施行したのは6例(24%)であった.6例中4例は術後も降圧薬を服用していて,5例は3回以上のPTRAを行う,もしくは2016年2月までに行う予定であった.PTRAを再施行している群の平均年齢は25.8±8.1歳,PTRAを再施行していない群の平均年齢は32.2±8.9歳であった(P=0.126).
【考察】
FMDは非炎症性,非動脈硬化性の動脈変化疾患である.通常30〜50歳の女性に多いとされているが,今回の検討では男女比はFMDに限ると1:2.3であり,男性のFMDも少なくないことがわかった.高安動脈炎の6例はすべて女性であった.PTRAの再施行例は6例(24%)あり,PTRA後も定期的にエコーでフォローアップすることが重要である.再PTRAを必要とする症例は3回以上繰り返し再狭窄を起こす症例が多かった.また,複数回PTRAを施行している症例群と1回のみの症例群では統計学的に有意差はないものの,再施行している群のほうが若かった.症例数が少ないため今後もフォローして検討する必要がある.