Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
血管 血管③

(S735)

近年の住民健診における腹部大動脈瘤の頻度とスクリーニングの有用性評価

Recent Prevalence of Abdominal Aortic Aneurysm in Japanese Residents: Effective Utilization of Health Screening

高野 真澄1, 渡部 朋幸2

Masumi IWAI-TAKANO1, Tomoyuki WATANABE2

1福島県立医科大学集中治療部, 2医療生協わたり病院内科・循環器内科

1Intensive Care Unit, Fukushima Medical University, 2Division of Cardiology and Internal Medicine, Health Co-op Watari Hospital

キーワード :

【背景】
これまで,動脈硬化を基礎疾患として有するハイリスク群において,腹部大動脈瘤(AAA)が増加していることが報告されている.しかしながら,健康診断におけるアジア人のAAA有病率は低いことが報告されており,過去の報告においても日本人の市民健診におけるAAA有病率は低い.一方,近年の高齢化およびハイリスク群の増加に伴い日本人においてもAAA有病率の上昇が予想されるが,近年の住民健診におけるAAAの有病率およびAAAスクリーニングの有用性については明らかでない.
【目的】
本邦の一般住民健診におけるAAAの有病率およびAAAスクリーニングの有用性について明らかにすること.
【方法】
対象は2010年から2015年にかけて,腹部エコー検査を含む福島市民健診を受けた60歳以上の一般住民5150名(男性2071名,平均年齢67.8±6.9歳).全症例において,腹部超音波検査におけるAAAの有無(腹部大動脈径≧3 cm)と,リスクファクターとの関係を検討した.
【結果】
全5150名中16名(0.31%)にAAAが認められた.AAA(+)群とAAA(-)群において,年齢(76.6±8.7 vs 67.8±6.9歳,P<0.001),性別(男性81.3 vs 40.1%,P<0.001),虚血性心疾患の既往(25.0 vs 8.4%,P<0.05)に有意差を認めた.また,AAA(+)群ではAAA(-)群に比べ,喫煙率(p=0.08),高血圧(p=0.10)および脳卒中の既往(p=0.16)が高い傾向を認めた.多変量解析により,年齢と性別がAAAを有するための独立した規定因子であった.
【結語】
本邦では一般住民におけるAAA有病率は低く,AAAのスクリーニングは60歳以上男性において重要ではあるが,費用対効果の観点からは新たなAAAスクリーニングのプログラムとしてではなく,腹部エコー検査の一環として行うべきである.