Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
血管 血管③

(S735)

頸動脈超音波検査と甲状腺癌

The carotid artery ultrasonography and the thyroid cancer

安田 英明1, 堀 優1, 坪井 英之2

Hideaki YASUDA1, Yu HORI1, Hideyuki TSUBOI2

1大垣市民病院診療検査科血管専門検査室, 2大垣市民病院循環器内科

1Vasucular Laboratory, Ogaki Municipal Hospital, 2Cardiology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【背景】
頸動脈超音波検査時に甲状腺異常に遭遇することが多く,甲状腺を同時に観察することの有用性が報告されている.我々も昨年の第88回日本超音波医学会学術集会において頸動脈超音波検査時にどの程度甲状腺異常に遭遇するか調査し報告した.その結果男性で3割,女性で6割程であった.その後も調査を継続し,今回は甲状腺癌の頻度を調査した.
【目的】
頸動脈超音波検査時に遭遇する甲状腺癌の頻度を調べ,その画像を検討する.
【対象】
2014年1月から2015年8月までに頸動脈超音波検査が行われた連続1538例(男性:1040例,女性:498例) 年齢は26〜97歳(平均72.8歳)
【検討項目】
(1)頸動脈超音波検査時に遭遇する甲状腺癌の頻度
(2)遭遇した甲状腺癌の大きさ・性状
(3)頸動脈と甲状腺癌の位置関係
(4)過去の甲状腺検査歴
【使用装置】
東芝社製:Aplio 500 日立アロカ社製:prosoundα7
【結果】
(1)1538例の頸動脈超音波検査時に遭遇した甲状癌は10例(0.65%)であった.10例の性別内訳は女性6例,男性4例であった.年齢は54〜89歳(平均67.9歳)であった.
(2)甲状腺癌の大きさは9mm〜25mmで,平均12.9mmであった.性状は,何れも辺縁が粗雑で境界不明瞭であった.内部エコーは不均質な極低〜低エコーを呈し,微小石灰化を認めた.病理診断は乳頭癌が9例で,低分化癌が1例であった.周囲リンパ節転移を認めたのは4例であった.その内超音波で指摘できたものは1例であった.遠隔転移は1例も認めなかった.
(3)頸動脈と甲状腺癌の位置関係は,10例中7例が総頸動脈の直ぐ内側に存在し,特に甲状腺を意識しなくても通常の頸動脈スキャンで描出される位置であった.3例は峡部に存在し,その内2例は通常の頸動脈スキャンで一部描出された.1例は頸動脈のスキャンだけでは描出されない位置であった.
(4)過去の甲状腺検査歴は1例もなかった.
【考察】
甲状腺癌は無症状であることが多く,また甲状腺の検査を受ける機会が少ないこともあり検診等で偶然に発見されることが多い.超音波による検診での甲状腺癌発見率は0.1〜1.5%とされている.今回我々が行った調査では,頸動脈スクリーニング検査が行われた1538例中10例(0.65%)に甲状腺癌が発見されており,検診での発見率と同等であった.しかも,10例中7例は総頸動脈の直ぐ内側に存在し,特に甲状腺を意識しなくても描出される位置であった.従って,常に甲状腺を意識して検査を行えば峡部の病変も頸動脈検査時に検出可能と考える.動脈硬化性疾患の増加に伴い,頸動脈超音波検査の需要が増加していることより,頸動脈超音波検査を甲状腺も意識して行えば,甲状腺癌の早期発見につながり有意義であると考える.
【結語】
1538例の頸動脈超音波検査時に遭遇した甲状腺癌は0.65%であった.