Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
血管 血管③

(S734)

ペースメーカリード3本植え込み症例の内頚静脈血流パターン

Emergence of Internal Jugular Vein Flow Pattern in Patients Implanted Transvenous Permanent Three Pacemaker-leads

佐藤 和奏, 渡邊 博之, 新保 麻衣, 高橋 久美子, 飯野 貴子, 伊藤 宏

Wakana SATO, Hiroyuki WATANABE, Mai SHIMBO, Kumiko TAKAHASHI, Takako IINO, Hiroshi ITO

秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学講座

Department of Cardiovascular Medicine, Akita University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
経静脈ペースメーカ植え込み術後の合併症として,ペースメーカリードに伴う静脈血栓症が30-45%に出現すると言われている.ほとんどの症例では側副血行路が発達することによって無症状に経過すると言われているが,上大静脈を閉塞した場合に上大静脈症候群を発症する可能性があり,時に侵襲的な治療を余儀なくされる場合がある.しかしながら,静脈閉塞する前に予測,診断することは容易ではなく,静脈閉塞症状が出現してから診断されることが多い.さらにCardiac Resynchronization Therapy(CRT)が普及したことによって,ペースメーカリードを片側の鎖骨下静脈に2本ではなく3本挿入する手技が増えており,静脈閉塞の発生が今後さらに増える可能性がある.上大静脈症候群においては,静脈閉塞の一所見として内頚静脈血流がうっ滞することが知られている.この研究では,より静脈閉塞を起こしやすいと考えられる,経静脈ペースメーカリード3本を挿入されている患者において,超音波検査を用いて内頚静脈の血流パターンを評価し,静脈閉塞の発症リスクについて解析することを目的とする.
【方法・結果】
ペースメーカもしくはCRT植え込み術後の患者で,経静脈ペースメーカリードを同側に3本挿入されている12症例について解析を行った.全例,左鎖骨下静脈から経静脈的に3本のペースメーカリードが挿入されていた.仰臥位にて血管超音波検査を行い,両側の内頚静脈を観察したところ,12人中7人は左内頚静脈血流のうっ滞もしくは逆行性血流を認めた.その中には,泥状エコーを伴っている例や側副血行路が非常に発達している例も認めた.仰臥位から座位へ体位変換すると,これらの内頚静脈血流のうっ滞もしくは逆流所見は消失し,順行性血流へと変化した.一方,対側である右内頚静脈では,左とは対照的に豊富な順行性血流を認め,これは左内頚静脈がうっ滞しているための代償機構と考えられた.さらに,うっ滞もしくは逆行性血流のある群(7人)とない群(5人)に分けて,心臓超音波検査のパラメーターを比較・検討したところ,拡張能の指標とされる左房径,左室流入血流波形,僧房弁輪移動速度には有意差は認めなかったが,左室駆出率(LVEF)はうっ滞のある群で有意に低下し(LVEF; 34%vs 54%),左室拡張末期径(LVDd)はやはりうっ滞のある群で有意に拡大していた(LVDd; 60mm vs 51mm).これらから,経静脈リードが3本挿入され,なおかつ左室収縮能の低下している患者では,静脈血栓のリスクが高くなることが示唆された.なお,抗凝固薬の使用に関しては,両群に差は認めなかった.
【結論】
経静脈ペースメーカリードを3本挿入されている患者のうち,およそ6割に内頚静脈の血流障害を認めた.特に,左室収縮能が低下した患者では,リード関連血栓塞栓症のリスクが高くなることが予想される.血管超音波検査による内頚静脈のスクリーニングは,リード関連血栓塞栓症の予測に有用である可能性がある.