Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
血管 血管②

(S732)

内頚動脈狭窄診断における最大血流速度の計測法

Evaluation of measuring techniques of peak systolic velocity for diagnosis of internal carotid artery stenosis

岡村 穏1, 岡部 龍太1, 2, 竹川 英宏1, 3, 鈴木 綾乃1, 西平 崇人1, 岩崎 晶夫1, 鈴木 圭輔4, 平田 幸一4

Madoka OKAMURA1, Ryuta OKABE1, 2, Hidehiro TAKEKAWA1, 3, Ayano SUZUKI1, Takahito NISHIHIRA1, Akio IWASAKI1, Keisuke SUZUKI4, Koichi HIRATA4

1獨協医科大学神経内科脳卒中部門, 2公立阿伎留医療センター内科, 3獨協医科大学超音波センター, 4獨協医科大学神経内科

1Stroke Division, Department of Neurology, Dokkyo Medical University, 2Department of Internal Medicine, Akiru Municipal Medical Center, 3Center of Medical Ultrasonics, Dokkyo Medical University, 4Department of Neurology, Dokkyo Medical University

キーワード :

【目的】
超音波診断装置を用いた内頚動脈狭窄率の計測には,NASCET(North American Symptomatic Endarterectomy Trial)法,ECST(European Carotid Surgery Trial),Area stenosis法の3つがある.また,狭窄部では最大血流速度(peak systolic velocity:PSV)は上昇し,その値でNASCET法の狭窄率推定が可能であり,PSVが200cm/sec以上の場合,70%以上の狭窄と報告されている.一方,狭窄病変は狭窄部の血流方向が血管そのものと平行である例,粥腫病変の形状により狭窄部の血流方向が血管の走行と一致しない例が存在する.このような症例においては,角度補正を血流方向と血管走行方向のどちらに設定すべきは明らかになっていない.
【対象と方法】
脳血管障害,高血圧や脂質異常症,糖尿病などの動脈硬化性疾患のスクリーニング目的に頸動脈超音波検査が施行された症例のうち,内頸動脈分岐部狭窄が存在し,脳血管撮像が施行された96症例で,狭窄部の血流方向が内頸動脈の走行方向と一致しなかった54例(平均年齢70.7歳,男46例)を対象とした.狭窄部のパルスドプラ波形の測定は,リニア型探触子(中心周波数7.5MHz)を使用した.補正角度は60度以内にし,サンプルボリュームは狭窄部を十分に覆うように設定した.血流方向に角度補正を行った群を血流群,血管方向に角度補正を行った群を血管群と定義した.脳血管撮像による狭窄評価はNASCET法で行った.両群におけるPSV値とNASCET法の狭窄率について単回帰分析,Receiver Operating Characteristic(ROC)curveを用い後方視的に解析した.なお本研究は,当施設の研究倫理指針に基づき施行した.
【結果】
内頸動脈の走行方向にあわせて角度補正が行われた血流群は22本であり,血流方向に角度補正がなされた血管群は37本であった.血管群におけるPSVと狭窄率には有意な相関を認め(p=0.009,r=0.543),さらに血流群ではより有意な正の相関が得られた(p=0.00041,r=0.621).狭窄率70%以上の診断においてROCの曲面下面積は,血管群0.74,血流群0.81であり,前者はPSV 202cm/secをカットオフ値とすると,感度93.3%,特異度28.6%,後者はPSV 223cm/secをカットオフ値とすると,感度92.9%,特異度47.8%であった.
【考察・結語】
本検討はPSVを用いた内頸動脈分岐部狭窄診断において,角度補正を血流方向に設定し計測するほうがNASCET法狭窄と相関が強いことを証明した.症候性の虚血性脳卒中では中等度以上の狭窄で,無症候性では高度狭窄で内膜剥離術や頸動脈ステント留置術が考慮される.本治療を行うには造影剤を用いたCT検査,脳血管撮像といった侵襲性のある検査が必要となる.従って非侵襲的な検査である頸動脈超音波で狭窄率を正確に診断することが重要となる.結論として,PSVを用いた内頸動脈狭窄診断を行う場合,血管の走行方向に角度補正を行うのではなく,粥腫病変に応じ,血流方向に補正をすべきである.