Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
血管 血管①

(S730)

心臓カテーテル穿刺前血管エコーの有用性の検討

Usefulness of Vascular echo of before cardiac catheter puncture

大久保 友紀1, 平賀 真雄4, 中村 克也4, 坂口 右己4, 佐々木 崇4, 林 尚美1, 塩屋 晋吾4, 肱黒 公博2, 寺師 利彦2, 重田 浩一朗3

Yuki OKUBO1, Masao HIRAGA4, Katuya NAKAMURA4, Yuuki SAKAGUCHI4, Takashi SASAKI4, Naomi HAYASHI1, Shingo SHIOYA4, Tomohiro HIJIKURO2, Toshihiko TERASHI2, Kouichirou SHIGETA3

1霧島市立医師会医療センター臨床検査室, 2霧島市立医師会医療センター循環器内科, 3霧島市立医師会医療センター消化器内科, 4霧島市立医師会医療センター放射線室

1Department of Clinical Laboratory, Kirishima Medical Center, 2Department of Cardiology, Kirishima Medical Center, 3Department of Gastroenterology, Kirishima Medical Center, 4Department of Radiology, Kirishima Medical Center

キーワード :

【はじめに】
心臓カテーテル検査(以下,心カテ)や経皮的冠動脈形成術(以下,PCI)では穿刺法としてSeldinger法が主流となっており,穿刺部位は上腕動脈,橈骨動脈,大腿動脈の3カ所がある.最近では中心静脈カテーテル挿入を行う場合には安全性をより高めるために,超音波ガイド下でカテーテル挿入をしている施設が増えてきている.しかし,心カテでは超音波ガイド下での挿入や検査前の超音波検査で穿刺部血管の状態を確認している施設は少ない.当院では2011年から心カテ前の超音波検査時に穿刺部血管の状態や血管周囲の観察を超音波検査技師が行っている.今回は2014年1月から2015年12月中旬までの期間に上肢血管穿刺で心カテを行った491例について,穿刺部位血管の観察の有用性について検討した.
【対象】
2014年1月1日から2015年12月14日の間に左右上腕動脈もしくは左右橈骨動脈を穿刺して心カテ・PCIを行った491例.
【方法】
心カテ前に穿刺予定の血管径・血流波形・穿刺部位より中枢側の強い蛇行や狭窄の有無・穿刺時に穿刺ラインにかかる可能性のある血管や正中神経の有無を超音波検査により観察した.異常や穿刺困難と判断した場合は対側や他の穿刺部位についても観察した.これらの結果により予定穿刺部の変更の有無を確認した.また,心カテ後の穿刺部位合併症の中でも心カテ前の超音波検査で回避が可能と思われる動静脈瘻形成の有無と正中神経障害の有無を確認した.
【結果】
対象期間中の対象症例数491例中,穿刺部位血管超音波検査の依頼件数は329例(67%).内,穿刺困難や穿刺時の注意を促す所見のあった症例数は70例(21%),実際に穿刺部位の変更が行われた症例数37例であった.
対象症例491例中,穿刺部位の動静脈瘻形成の症例数は5例(1%).内,穿刺部位超音波検査を行った症例は2例/329例(穿刺部変更なし,穿刺部位超音波検査実施件数中0.6%).穿刺部位超音波検査を行っていなかった症例は3例/162例(穿刺部位超音波検査未実施件数中1.9%)であった.正中神経障害の症例は発生しなかった.
【考察】
今回の検討では穿刺部位超音波検査未実施では,3例の動静脈瘻形成があり,穿刺部位超音波検査実施し,有所見とした70症例では2例の動静脈瘻形成があったが,所見のなかった259症例中動静脈瘻形成は0件であり,穿刺部位超音波検査は動静脈瘻形成予防に有用と考える.穿刺部位超音波検査実施したが動静脈瘻を形成した2例ついては,1例は超音波検査結果で穿刺動脈の穿刺ライン上にある静脈を超音波検査で指摘はしていたが,超音波検査時と心カテ穿刺時で患者の腕の向きがわずかに異なり,静脈を避けたつもりが穿刺ラインにかかってしまったため起きたものと思われる.もう1例は心カテ施行医師に血管の位置がうまく伝わっておらず,技師と医師のコミュニケーション不足により起こったものと思われる.今後は穿刺部位超音波検査時に患者の腕の固定や心カテカンファレンス等で医師と技師が積極的にコミュニケーションを取っていく必要があると考える.正中神経障害について今回合併症は発生しなかったが,正中神経は超音波検査で位置の確認が容易にできるため,穿刺部位超音波検査は正中神経障害の予防に非常に有用と考える.また,血管の走行異常(橈骨動脈・尺骨動脈の高位分岐,血管の低形成など)も心カテ前に指摘できるため,安全に心カテを行うのに非常に有用である.
今回の検討では上肢動脈からの穿刺症例のみの検討であるが,上腕動脈,橈骨動脈の穿刺よりも大腿動脈の穿刺による末梢血管合併症の発生率が高いと言われている.今後は大腿動脈についての検討も行いたい.