Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
産婦人科 母体・分娩②

(S724)

産後過多出血をきたした子宮内反症例の超音波検査所見

Acute puerperal uterine inversion: 3 cases and managements

深見 達弥, 後藤 麻木, 辻岡 寛, 江口 冬樹

Tatsuya FUKAMI, Maki GOTO, Hiroshi TSUJIOKA, Fuyuki EGUCHI

飯塚病院産婦人科

Obstetrics & Gynecology, ASO Iizuka Hospital

キーワード :

【はじめに】
子宮内反症とは子宮内膜面を外方に反転した状態をいい,子宮底が陥没または下垂内反し,時には子宮内壁が腟内もしくは外陰に露出する.報告により頻度に差があるが2,000から30,000分娩に1例で認められ,分娩3期に起こる母体の生命予後に関わる重篤な疾患であるが,発症と同時に激しい疼痛と多量の外出血を伴い,短時間でショック状態になり全身状態が悪化する疾患である.子宮内反症は診断が困難なことが多く治療開始に遅れを生じることがあるが,全身状態悪化の前に早期診断を行い適切な子宮用手整復を施行できれば非観血的子宮整復の成功率も高い.産科危機出血は,発展途上国はもとより,先進国においても妊産婦死亡の主要原因のひとつである.日本産科婦人科学会によると,単胎経腟分娩における分娩時出血の90パーセンタイル値は800mlで,10人に1人はそれ以上出血することに留意せねばならず,母体の生命に関わるような分娩時多量出血は,妊産婦300人に1人の割合で起こる合併症であり,決して稀ではない.出血が1,000ml以上もしくは循環不全を起こすと分娩時過多出血は重症とみなされる.分娩時過多出血は世界的に見て最多の母体死亡原因である.内反した子宮体部は収縮不全となり,かつ内膜面が過伸展した状態であるため,胎盤剥離面から大量出血する.一方,子宮体下部や頸管は収縮していることが多く,この収縮輪が内反筋層を絞扼して,強い痛みを訴える.ショックは過多出血による出血性ショックのみならず腹膜が伸展し迷走神経反射からもショックをきたす.産後過多出血の原因として4つのT(Four T’s)が挙げられる.一度,出血が過剰であることを認めたならば,4T(子宮筋の緊張,外傷,組織およびトロンビン)に沿って迅速な治療を開始しなければならない.胎盤娩出後の産後出血の70%は子宮弛緩症によるものである.出血を軽減するためにまずは子宮マッサージを行い,子宮収縮剤を使用する.子宮弛緩症が治療された後に出血が持続した場合,次に頻度の多い(20%)外傷を検討する.そのなかでも産道裂傷もしくは血腫が確認されなかった場合,子宮破裂もしくは子宮内反症を疑う.
【症例】
今回報告する3症例では,全症例とも当初は弛緩出血とし子宮収縮剤の投与が行われたが出血が軽快しないことや超音波検査所見より子宮内反症の診断となった.症例1,2はStage 2の完全内反症であり超音波検査所見は典型的な内反漏斗を示していたが,症例3は漿膜面の陥入のみを認める不全内反症で当初は弛緩出血と診断されたため修復までに時間を要した.
【考察】
子宮内反症の診断は1)肉眼的に内反子宮が,腟内あるいは腟外に脱出している.2)双合診にて子宮底が陥凹している.あるいは子宮底が腹部に触れず内診指で腫瘤を触知する.3)超音波やMRIなどの画像診断で子宮のinside out, upside downの像,子宮内膜のY字像(内反漏斗)を認める.完全内反では,胎盤娩出後に出血性腫瘤を認める場合,視診のみで診断を推定できることがある.しかし不全内反症例では,強い疼痛・大量出血・ショック状態など非特異的な症状のみを呈する例があり,内診や画像検査により総合的に診断される.不全内反では診断が難しく弛緩出血の治療として子宮収縮剤の投与を行い内反の改善を妨げ病態を悪化させる可能性がある.3例の産褥性子宮内反症を経験し以下の知見を得た.1)早期診断のためにも稀な合併症とはいえ子宮内反症の可能性を念頭に置く.2)特異的な超音波像を念頭に置き早期診断を試みる.3)疼痛・出血対策を行い,非観血的子宮用手整復は全身麻酔下で行う.