大谷 利光, 春日 義史, 秋葉 洋平, 福武 麻里絵, 正木 繭, 落合 大吾, 松本 直, 宮越 敬, 田中 守

Toshimitsu OTANI, Yoshifumi KASUGA, Youhei AKIBA, Marie FUKUTAKE, Mayu MASAKI, Daigo OCHIAI, Tadashi MATSUMOTO, Kei MIYAKOSHI, Mamoru TANAKA

慶應義塾大学医学部産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Keio University, school of Medicine

キーワード :

【緒言】
総胆管嚢腫（胆道拡張症）は，小児期胆管炎・肝炎の原因となる先天的胆道疾患の一つである．新生児期の総胆管嚢腫破裂例も報告されていることから，その胎内診断は疾患児の安全な新生児管理・予後改善につながるものと考えられる．総胆管嚢腫は胎児期には肝直下嚢胞として描出されるが，正常胆嚢との鑑別に苦慮することも少なくない．今回我々は，当院における総胆管嚢腫胎内診断例の出生後最終診断および胎児超音波検査所見を後方視的に検討したので報告する．
【方法】
対象は2011年から2015年に当院胎児外来にて，肝下面正中の嚢胞像をもとに総胆管嚢腫と出生前診断した6例である．出生後，6例中3例は総胆管嚢腫と最終診断されたが，2例は正常胆嚢，1例は重複胆嚢疑いとなった．本検討では出生後の総胆管嚢腫例（嚢腫群）と非総胆管嚢腫例（非嚢腫群）について，検出時妊娠週数と嚢胞径，胎児期における嚢胞径の変化および嚢胞像の形態的特徴について比較検討を行った．
【結果】
嚢腫群と非嚢腫群で検出時妊娠週数（中央値：妊娠31週vs妊娠30週）および嚢胞径（中央値：22mm vs 21mm）に有意差は認められなかった．また，両群とも胎児期に嚢胞径の変化を認めなかった．嚢腫群では全例が肝下面やや正中側に管状エコー像を伴う嚢胞像を呈したが，非嚢腫群では管状エコー像は描出されなかった．また，嚢腫群ではいずれも正常胆嚢は描出されなかった．
【結語】
胎児超音波検査で肝下面やや正中側に嚢胞像を認めた場合は，その辺縁に存在する管状エコー像の有無が総胆管嚢腫の出生前診断の一助となる可能性が示唆された．