Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
産婦人科 胎児心臓循環

(S704)

胸部下行大動脈の位置による右側大動脈弓の胎児スクリーニング

The fetal screening for right aortic Arch with the position of tracic descending aorta

川滝 元良, 金 基成

Motoyoshi KAWATAKI, Motonari KIM

神奈川県立こども医療センター小児循環器科

Department of Pediatric Cardiology, Kanagawa Children’s Medical Center

キーワード :

【背景】
右側大動脈弓(RAA)は円錐動脈幹奇形など多くの重症先天性心疾患に合併していることが知られている.RAAから重症先天性心疾患をスクリーニングする方法は有用な胎児心スクリーニング法として報告されている.RAAはthree vessel trachea view(3VTV)での気管と大動脈弓の位置関係から診断されている.しかし,3VTVは日本胎児心臓病学会のレベル1のスクリーニングには含まれていない.レベル1の胎児スクリーニングを担当している産科医,検査技師にとっては,技術的に必ずしも簡単ではない.そこで,我々は,Four Chamber View(4CV),Five Chamber View(5CV), Three Vessel View(3VV)における胸部下行大動脈の位置に注目して,より簡便なRAAの新しいスクリーニング法を考案したので,報告する.
【対象と方法】
重症心血管奇形を合併したRAAの63例および心疾患を合併しない左側大動脈弓(LAA)の77例を対象とした.両群間で在胎週数に差はなかった.STIC(Spatio Temporal Image Correlation)で保存されていたボリュームデータを,専用ソフトをインストールしたパソコン上で解析した.4CV,5CV,3VVにおける胸部下行大動脈の位置を,脊柱と臍帯静脈を結ぶ直線を基準として,目視にて判断した.左前方,正中,右前方の3群に分類した.検査者は1人で判断した.
【結果】
LAAにおいては,4CVでは64/77例(83.1%)が脊柱の左前方に,13/77例(16.9%)が正中に位置していた.脊柱の右前方に位置している症例はなかった.5CVでは71/77(92.2%)が脊柱の左前方に,6/77(7.8%)が正中に位置していた.脊柱の右前方に位置している症例はなかった.3VVでは76/77(98.7%)が脊柱の左前方に,1/77(1.3%)が正中に位置していた.脊柱の右前方に位置している症例はなかった.一方,RAAにおいては,4CVでは45/63例(71.4%)が脊柱の右前方に,18/63例(28.6%)が正中に位置していた.脊柱の左前方に位置している症例はなかった.5CVでは55/63例(87.7%)が脊柱の右前方に,8/63例(12.3%)が正中に位置していた.脊柱の左前方に位置している症例はなかった.3VVでは59/63例(93.7%)が脊柱の右前方に,4/63例(6.3%)が正中に位置していた.脊柱の左前方に位置している症例はなかった.intra-observerのerrorは5%以下であった.
【考案】
出生後の経胸壁心エコーでは,空気を含む肺などによって,胸部下行大動脈〜大動脈弓の全体像を観察することは困難である.一方,胎児心エコーでは空気が介在しないため,大動脈弓から胸部下行大動脈全体を容易に観察することができる.特に最近進歩した3D4Dエコーを用いると,胸部下行大動脈の位置は簡単に正確にスクリーニング可能である.今回の研究では,胸部下行大動脈はLAAでは脊柱の左前方に,RAAでは脊柱の左前方に位置しており,一部は正中に位置していた.4CV→5CV→3VVと上方に移動するにつれて,LAAではより脊柱の左前方に,RAAではより脊柱の右前方に移動していた.この結果から,4CV,5CV,3VVにおける胸部下行大動脈の位置を使って,以下のようなLAAの簡便なスクリーニング法を考案した.4CVにおいて,胸部下行大動脈が脊柱の左前方にあればLAA,右前方にあればRAAと診断する.脊柱の前方に位置している場合にはプローブを4CV→5CV→3VVとより上方に移動させて,再度判断する.3VVでも正中に存在する症例が少数(RAAの6.3%LAAの1.3%)に存在していた.そのような症例は,この方法での判断不能症例として,3VTVでの大動脈弓と気管の位置で判断する.
【結語】
胸部下行大動脈の位置に注目した,より簡便なRAAの新しいスクリーニング法を考案したので,報告した.