Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
頭頸部

(S700)

舌癌底面エコーの不明瞭化

Tongue carcinoma with fuzzy boundary of bottom echo

石井 純一1, 八木原 一博1, 桂野 美貴1, 土田 絵梨1, 石川 文隆2, 柳下 寿郎2, 岡田 茂治3, 大滝 加奈江3

Junichi ISHII1, Kazuhiro YAGIHARA1, Miki KATSURANO1, Eri TSUCHIDA1, Ayataka ISHIKAWA2, Hisao YAGISHITA2, Shigeharu OKADA3, Kanae OHTAKI3

1埼玉県立がんセンター口腔外科, 2埼玉県立がんセンター病理診断科, 3埼玉県立がんセンター検査技術部

1Department of Oral Surgery, Saitama Cancer Center, 2Department of Pathology, Saitama Cancer Center, 3Department of Clinical Laboratory, Saitama Cancer Center

キーワード :

【目的・対象】
われわれは舌癌症例に対し,2012年から術中に超音波診断を併用して舌切除術を行っている.ステージⅠ,Ⅱの舌扁平上皮癌は原発巣のみが切除されることが多い.それでも,大部分の症例は予後良好である.しかし,中にはすぐに頸部リンパ節に転移したり,原発巣が再発したりして不幸な転帰をとる症例も少なからず存在する.もし術前にエコー像から予後不良症例の予測ができれば,そのような症例は予防治療等により減少することが期待される.そこで今回われわれはエコー像,特に底面エコーの不明瞭化が予後判定の基準になるかどうかを明らかにすることを目的に以下の検討を行った.
2012年8月から2015年2月までの間に当科で術中超音波診断を行った舌扁平上皮癌31例を対象にした.その中で底面エコーの不明瞭化の見られた13例をその他の症例18例と比較した.癌のステージはⅠ,Ⅱ,全例全身麻酔下に術中超音波診断後切除術を行った.
【方法・結果】
使用機種は東芝Aplio 500.周波数11MHzのホッケー型探触子を使用した.手術に先立って行った舌癌の超音波診断では以下の項目を計測した.低エコーで描出された腫瘍の大きさ,深さ,腫瘍内血流の有無,速度,拍動指数,抵抗指数,エラストグラフィー.切除時の深さは術中超音波診断を参考にして決定した.
不明瞭化の見られた13例の大きさは長径13.6〜30mm,平均20.5mm.一方,その他の症例18例では長径4.8〜30mm,平均15.4mm.同様に,深さは5.4〜12.2mm(2.2〜10mm),平均8.5mm(5.5mm),血流速度は4.4〜20cm/s(5.17〜21.4mm/s),平均9.3cm/s(7.8 cm/s),拍動指数は0.99〜4.33(0.723〜4.12),平均2.22(1.94),抵抗指数0.26〜1.00(0.51〜1.00),平均0.78(0.79)であった(カッコ内はその他の症例の値).術後retrospectiveにエコー像を観察し,底面エコーが不明瞭であった症例とその他の症例の浸潤先端部の組織学的浸潤様式(YK分類),頸部転移の有無,生存率を検討した.不明瞭症例で,病理組織学的にも境界不明瞭な索状型,び漫型であるYK-4C〜4Dが23%に対し,その他の症例では3.2%であった.転移の有無では不明瞭化の症例が13例中11例(85%)に転移が認められたのに対して,その他の症例では18例中4例(22%)と不明瞭化症例の方が有意に多かった.24か月生存率を比較すると不明瞭化症例は37.4%に対し,その他の症例が89%と明らかな差がみられた.
【考察・結論】
今回の検討から,舌癌エコー像の底面エコーの不明瞭化は組織学的浸潤様式,頸部転移の頻度,術後の生存率との間に関連が見られ,予後判定の基準となり得る可能性が示唆された.
今後の課題は,以下の2点が挙げられる.さらに症例数を増やし検討すること.次いで,底面エコー像については,不明瞭化を数値であらわすなどの客観的な評価を行うことも必要である.