Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
甲状腺 甲状腺・皮膚

(S695)

超音波検査による皮膚悪性腫瘍の腫瘍径診断

The assessment of maximum tumor thickness in malignant cutaneous tumors by ultrasonography

正畠 千夏

Chinatsu SHOBATAKE

奈良県立医科大学皮膚科学教室

Department of Dermatology, Nara Medical University

キーワード :

【背景】
皮膚悪性腫瘍の加療においては手術が第一選択であり,手術時に十分マージンをとって切除することが重要である.悪性黒色腫の治療ガイドラインでは腫瘍径によって詳細にマージンも設定されているが全切除前に垂直腫瘍径が推測可能であれば一期的な切除も可能である.基底細胞癌や有棘細胞癌でも真皮内にとどまる病変か皮下浸潤があるかによって切除範囲が異なる.
近年では高周波プローベの普及にともなって皮膚科領域でも超音波検査の有用性が報告されており,当院では悪性腫瘍の全切除前に積極的に原発巣の観察を行っている.
【目的】
超音波検査上での垂直腫瘍径と病理組織学的腫瘍径を比較し,術前超音波検査の有用性を検討した.
【対象・方法】
当院で悪性黒色腫11例(in situ病変4例 7例では腫瘍径0.7〜14.3mm),基底細胞癌13例(腫瘍径1.8〜14mm),有棘細胞癌6例(腫瘍径1.8mm〜6.4mm)について全切除前に超音波検査を施行した.
使用装置はLOGIQE9で高周波プローブ(12〜18MHz)を用いた.Bモードで腫瘍を観察後,腫瘍の垂直腫瘍径を測定し,カラードプラ法にて血流の有無も観察した.腫瘍切除後,病理組織標本で最大径を計測し比較検討した.
【結果・考察】
1,悪性黒色腫
内部均一な低エコー腫瘤としてとらえられ,血流の増加も伴っていた.in situ病変4例中3例では腫瘍の描出が困難であったが,炎症細胞浸潤が強い1例では真皮内浸潤があるように描出された.超音波検査上での腫瘍径と病理組織検査上での計測値を比較すると誤差は-0.3mm〜+0.7mm(平均誤差13.5%)と概ね一致していた.切除断端はすべての症例で陰性であった.
2,基底細胞癌
基底細胞癌に特徴的な内部に綿花様の高エコーspotを伴う低エコー腫瘤としてとらえられた.組織型がモルフェア型の1例では腫瘍径の測定が困難であったが,12例では腫瘍径は誤差-0.8mm〜+2.2mm(平均誤差22.5%)と浸潤の範囲を決定でき切除断端はすべての症例で陰性であった.12例中9例が生検後に超音波検査が行われており,生検後の変化などにより垂直腫瘍径を過大評価した可能性が推測された.
3,有棘細胞癌
腫瘍表面の角化が強い1例では後方エコーの減衰が著明であり,腫瘍径の測定が困難であったが,5例は真皮内に至る境界不明瞭で不整な低エコー腫瘤として描出され,内部に角化などを現す点状高エコーを伴っていた.5例では誤差+0.2mm〜3.0mm(平均誤差19.0%)とほぼ浸潤の範囲を決定でき,切除断端はすべての症例で陰性であった.腫瘍包巣周囲の線維化が強い症例では腫瘍径を3mm過大評価していた.
【結語】
高周波リニアプローベを用いると皮膚悪性腫瘍の腫瘍径の計測が概ね正確に可能であり,術前に超音波検査を施行することは切除範囲の決定に有用であった.炎症細胞浸潤が強い場合や組織型などによっては超音波検査での描出,腫瘍径の測定が困難な場合もあり,今後も症例の蓄積と検討が必要と考える.