Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
乳腺 乳腺②

(S690)

乳腺腫瘍におけるSuperb Micro Vascular Imaging(SMI)の有用性について

Clinical usefulness of Superb Micro Vascular Imaging(SMI)in Breast Tumors

栗田 武彰, 栗田 幸子

Takeaki KURITA, Sachiko KURITA

くりたクリニック乳腺・甲状腺

Breast and Throid, Kurita Clinic

キーワード :

【はじめに】
Superb Micro-vascular Imaging(SMI)による血流表示はカラードプラ法に比較して,より微細な低流速の血流を表示することが可能とされている.今回,従来のパワードプラ法(PD),Advanced Dynamic Flow(ADF)とSMIの3モード間で,血流形態・分布などの描出能力を比較し,乳腺腫瘍の血流評価におけるSMIの有用性について検討したので報告する.
【方法】
使用機種は東芝メディカル社Aplio500,使用プローブはPLT-1204BT,PLT-1204BXである.当クリニックで経験した乳腺腫瘍に対し,PD,ADF,SMIの3者間で乳房超音波診断ガイドライン(改訂第3版)の“乳房超音波カラードプラ法の臨床的評価”に記載されている①バスキュラリティ,②血流形態・分布,③腫瘤へ流入する血管の入射角,④乳腺嚢胞内腫瘍の良・悪性判定基準(案)の描出能力に関して比較検討した.SMIにはcolor coded SMI(cSMI),monochrome SMI(mSMI)2つの表示モードがあり,その差異を検討した.SMIのMax Hold処理画像(血管情報の加算された画像が静止画および動画として記録)についても描出能力を検討した.
【結果】
① 血流の豊富さをバスキュラリティとして4段階に評価したが,SMIはより主観的・定量的な評価が他の2者に比較し良好であった.悪性でバスキュラリティが高い傾向にあったが,良性でも腫瘤が大きいものはバスキュラリティが高いことが多く,良悪性だけではなく,腫瘍の大きさに依存していることが確認された.乳癌組織亜型によるバスキュラリティの多様性がみられ,硬癌では境界部高エコーに一致して血流を認めるが,多くの場合腫瘍内部には血流は認めなかった.充実腺管癌,乳頭腺管癌では腫瘍内部に豊富な血流を認めた.
② 乳腺充実性腫瘍の良性・悪性の判定基準(案)に関しては,血流形態・分布を観察した結果,良性では血流を欠く,単調,なだらか,円弧状,境界に沿う血流を示すことが多かった.悪性では屈曲蛇行,広狭不整,貫入する,貫通する,周辺の血流増加を示すことが多かった.SMIはPD,ADFに比較し,より血管構築や血管形態を描出することが良好であった.
③ 腫瘤へ流入する血管の入射角の判定でも,SMIは血流が明瞭,詳細に描出されるため他の2者に比較し良好に判定できた.
④ 乳腺嚢胞内腫瘍の良・悪性判定基準(案)良性では血流を欠く,1本の流入血流,複数の流入血流を描出することが求められるが,SMIでは流入血流が明瞭,詳細に描出された.
⑤ SMIのMax Hold処理画像は血流の連続的な加算画像が得られ,腫瘍全体および腫瘤外におよぶ広範囲な血流形態の描出が可能であった.
【考察】
判定基準では「バスキュラリティ」や「血流形態・分布」という立体的な血管の走行を観察する必要があり,屈曲蛇行や多方面からの流入といった立体的な血流形態を静止画で記録するためには動画による判定が必須である.
SMIは,造影剤を使用せず,血流形態や分布を描出することに優れており,さらにSMIのMax Hold処理画像では血管情報の加算された画像が静止画および動画として記録できる.これにより従来記録できなかった腫瘤内外の血流を擬似的な立体画像として記録し表現することが可能となった.3D画像のようなボリュウムデータは残せないが,簡単な操作で擬似立体的に記録できるという点において優れている.
【まとめ】
乳腺腫瘍において,SMIは従来のPD,ADFに比較し,簡便な操作で複雑な血管形態を詳細に観察,記録することが可能であった.Comprehensive ultrasoundにおいても血流評価にSMIを用いればより一段の精度向上が期待される.今後より良い撮像法,評価法が確立することが期待される.