Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
乳腺 乳腺②

(S690)

自動スキャン乳房専用超音波診断装置の応用と課題についての検討

Investigation of application and problem of Automated Breast Ultrasound System

水谷 三浩1, 2, 吉田 直子2, 3, 岡田 あかね2, 3, 小林 美樹2, 小島 美由紀2, 小野寺 麻友美2, 野村 亜紀2, 水谷 玲子1

Mitsuhiro MIZUTANI1, 2, Naoko YOSHIDA2, 3, Akane OKADA2, 3, Miki KOBAYASHI2, Miyuki KOJIMA2, Mayumi ONODERA2, Aki NOMURA2, Reiko MIZUTANI1

1三河乳がんクリニック乳腺外科, 2同画像診断科, 3同病理診断科

1Breast Surgery, Mikawa Breast Cancer Clinic, 2Breast Imaging, Mikawa Breast Cancer Clinic, 3Pathology, Mikawa Breast Cancer Clinic

キーワード :

【背景・目的】
従来の超音波検査は,検者が探触子を走査しながら,モニター上に映し出される超音波所見を解析・診断しつつ,画像を記録するといった様式である.また病変の描出から超音波所見の判定に至る全ての行程が検者の技量に委ねられ,かつ超音波像が2次元情報であるために,その画像情報が第三者に客観性・再現性をもって伝達しにくい,といった欠点をも有する.これらの難題すなわち検者への依存性の強さ,客観性・再現性の乏しさを解決すべくGEヘルスケア社から乳房専用の自動スキャン超音波診断装置Invenia ABUS(以下ABUS)が開発された.そこで当院では2015年12月よりABUSの基礎的研究に着手した.具体的課題は,(1)効率的で見逃しのない全乳房スキャンのために,被験者の個体差(体格や乳房の大小と乳腺/脂肪の構成など)毎の適切なポジショニングやABUS独自のリバースカーブプローブ(RCP)の密着の工夫などの至適なスキャン法を確立すること.(2)得られたABUSの画像所見を病変の性状・病理との整合性に基づいて解析し,その基本性能を見極めること.(3)ABUSのワークステーション(WS)に転送された豊富な情報の迅速な処理と判断プロセスの最適化,などである.これらの基礎的研究を礎にABUSの検診・臨床への導入をはかり,包括的乳房診断システムの構築へ繋げたいと構想している.
【対象・方法】
2015年12月以降の当院の原発性乳癌全例および良性病変の確診例を対象とする.GEヘルスケア社製ABUSを使用し乳房超音波を実施し,検討項目として(1)①スキャンエリア,②検査効率,(2)ABUSの診断能(存在診・鑑別診)の評価,(3)画像情報の診断アプローチの標準化などについて,データを集積し解析する.
【結果・考察】
抄録提出時はABUS導入後まもないため,結論を述べるには時期尚早だが,これまでの解析から各項目別に,(1)①病変の描出からブラインドエリアを検索しており,乳房C´領域をも含むようなポジショニングとRCPの密着法に工夫を要する,と思われる.②学習効果と個別化によりABUSの検査時間を短縮化しかつ精度の安定化をはかりたい.標準的には両側3方向(正面,外・内側面)スキャンの推奨であるが,当院では4方向(3方向+上部)を採用し,約15分の所要と3方向と大差ない.C´領域のスキャンも合わせ,個別化と工夫によって検査時間の調整可能と考えている.(2)内部エコー,増殖形態,微細石灰化病変など諸因子で解析中であり,ABUSの診断能力の限界を明らかにしたい.今のところ浸潤癌の描出には全例問題ないが,内部エコーレベルが脂肪に近い腫瘤像の検出困難な印象を受ける.このため微細石灰化病変(DCIS)などの腫瘤像非形成性病変や乳管内進展の広がり診断などに懸念がありそうだ.(3)ABUSのWSでは画像のマルチ表示で過去画像や他の断面像と同時に対比できる.それでもABUSの3D画像情報が膨大なので高精度かつ迅速な診断のためには,適確に情報処理する方法論が不可欠であろう.効率からは,まずCplane view(冠状断)の評価から始める手順が見落としなく素早い様に思う.今後多数症例の蓄積から然るべき基礎的研究を経て,ABUSの検診・臨床への導入をはかり,包括的乳房診断システムを構築したい.dense breastを有するアジア人女性の乳癌診療・検診に乳房超音波が広く利用され,多くの早期癌発見による救命効果が実現するためには,自動スキャン乳房専用超音波診断装置の発展は重要な鍵になるものと考える.