Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
乳腺 乳腺②

(S689)

妊娠・授乳期の乳房超音波についての検討

Evaluation of effectiveness of breast ultrasound in gestation and lactation period

水谷 三浩1, 2, 吉田 直子2, 3, 岡田 あかね2, 3, 小林 美樹2, 小島 美由紀2, 水谷 玲子1

Mitsuhiro MIZUTANI1, 2, Naoko YOSHIDA2, 3, Akane OKADA2, 3, Miki KOBAYASHI2, Miyuki KOJIMA2, Reiko MIZUTANI1

1三河乳がんクリニック乳腺外科, 2同画像診断科, 3同病理診断科

1Breast Surgery, Mikawa Breast Cancer Clinic, 2Breast Imaging, Mikawa Breast Cancer Clinic, 3Pathology, Mikawa Breast Cancer Clinic

キーワード :

【目的・背景】
乳癌好発の30代後半〜40代の出産は現状で決して稀でない.然るに乳癌検診のほとんどが妊娠・授乳期を対象外としており,現状にそぐわない.これはMMG検診の多いこともあるが,妊娠・授乳期の超音波診断(以下US)が困難とされているからではないか.当院では妊娠・授乳期のUS検診や診療に積極的に取り組んでいる.そこで今回妊娠・授乳期のUSについて総括的に述べたい.
【検討1】
初めに妊娠・授乳期乳房そのもののUSの変化について,次いで高頻度に合併する乳瘤と線維腺腫について述べる.
【対象と方法】
当院外来を診療や検診目的で受診した妊娠・授乳期の患者を対象とし,そのUS所見を検討した.
【結果】【妊娠・授乳期の乳房US】
<妊娠期>非妊娠期と比べ妊娠初期に変化なく,中期〜後期にかけ徐々に乳腺・脂肪ともに肥厚する.妊娠後期の特に9〜10ヶ月頃は,腺葉の高度発達のため,乳腺症の豹紋状パターンのような紋様が目立ってくる.
<授乳期>授乳の開始とともにほぼ乳房全体が単一構造となり,皮下脂肪と乳腺の区別不能となり乳腺内の紋様も消失する.授乳期の変化は断乳後1〜2ヶ月で通常に戻る.
【乳瘤】
授乳期特有である.初期段階では無エコー像(単純嚢胞)として描出,経過とともに混濁し白色調を帯びる.ついでICTに近似する像を呈し,後方エコーの減弱する円・楕円形腫瘍へと変わる.例えれば,serous fluid⇒練乳⇒ヨーグルト⇒チーズの順のごとくに想像するとわかりやすい.断乳とともに乳瘤は縮小・消失する.
【線維腺腫】
<妊娠期>増大するものや不変のものもある.増大しても腫瘍の構成は著変なく,診断容易である.
<授乳期>高度に増大するものがある一方で,不明瞭化し所在不明となるものもある.増大するものは内部に嚢胞形成を多く伴う.
【検討2】
授乳期乳癌のUS診断について.
【対象】
2009年4月〜2015年9月の当院の原発性乳癌1022例のうち,授乳中の診断例9例(DCIS2例,a2-2例,a3-3例,b2-1例,b5-1例)を対象とした.平均年齢は37.6歳(29〜45歳).平均腫瘍径は3.4cm(0.9〜5cm)であり,リンパ節転移は6例陽性であった.
【結果】
US所見で腫瘤像を呈した7例(形状整3例,不整形4例)は,境界部の評価も可能(明瞭粗造4例,不明瞭3例)であった.全例で内部エコーは低く不均質であった.また点状高エコー(微細石灰化)が4例で確認され,腋窩リンパ節腫大が5例で認められた.7例のUS判定は全例カテゴリー4以上であった.非腫瘤性病変2例では,広範囲に不整低エコー域が拡がり,内部に点状高エコーも認めたことから,初診時のUS施行時よりDCISと診断され,最終診断もDCIS(充実〜篩型,充実〜面疱型)であった.
【考察】
妊娠・授乳期乳房はその時期ごとの構成があり,US解剖も独特であるが,乳癌の存在診・鑑別診ともに障害にならない.また同時期に高頻度の乳瘤と線維腺腫についても,経時的に著しい変化もありうるが,一様性の変化のため,時期折々のUS所見の理解があれば,これらもまた乳癌のUS診断に影響しないと思われる.さらに今回の検討からも,妊娠・授乳期乳癌のUS診断基準は通常のもので全く支障ないと判断される.加えて非腫瘤性病変でも背景乳腺に紛れることなく明瞭に描出されており,USによる組織型推定も可能であった.今回の対象例も腫瘍径が大きく,リンパ節転移を伴う進行癌例が大半であった.妊娠・授乳期女性に対しても積極的にUS検診を実施することで乳癌の早期診断は可能であろう.産婦人科医と協力し,検診・精査施設が一丸となって,妊娠・授乳期を経ることによる乳癌の予後の悪化を全力で防ぎたい.