Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
乳腺 乳腺①

(S688)

HER2陽性乳癌の超音波所見によるpCR率の相違についての検討

Study of ultrasound findings make the difference in the pathological complete response rate of HER2-positive breast cancer patients

稲垣 麻美1, 太田 大介1, 辻 宗史1, 森 正也2, 福内 敦1

Mami INAGAKI1, Daisuke OTA1, Munechika TSUJI1, Masaya MORI2, Atsushi FUKUUCHI1

1三井記念病院乳腺内分泌外科, 2三井記念病院病理診断科

1Breast Surgery Oncology, Mitsui Memorial Hospital, 2Pathology, Mitsui Memorial Hospital

キーワード :

【背景】
HER2陽性乳癌は増殖能が高いsubtypeであり,分子標的治療薬と化学療法が予後改善に重要な治療である.術前化学療法によるpCRの獲得は生命予後も改善するといわれているが,pCRが得られる乳癌の画像所見などの臨床学的な特徴は明確にされていない.2015年の第35回日本乳腺甲状腺超音波医学会学術集会で,HER2陽性乳癌の超音波所見の特徴は,乳管内に増殖するパターン(以降,typeA1)が約70%を占め,周囲に圧排性発育する腫瘤のパターン(以降,typeA2)の占める割合は約26%と発表した.全subtypeの乳癌で,超音波所見でtypeA2を示す病変はpCR率が高い報告もある.
【目的】
HER2陽性乳癌において,超音波所見がtypeA2のものとその他のもので術前化学療法のpCR率に相違があるか検討した.
【対象・方法】
2009年から2015年10月に当院で術前化学療法(以降,NAC)を施行後に手術したHER2陽性乳癌に対して,治療前の超音波所見を2008年角田らの報告を参照に増殖パターンによって分類し,pCR率の違いをretrospectiveにχ二乗検定で比較検討した.ホルモン感受性陰性のHER2 typeとホルモン感受性陽性のLuminal-HER2のsubtypeに分けた場合でも同様に検討した.NACの施行内容はAnthracycline→Taxane+Trastuzumabの症例に限った.pCRはNSABP B-18で定義されている浸潤癌の消失とした.
【結果】
対象は全42例,年齢中央値53歳(26-72歳),StageIが3,IIが24,IIIが15例であり,HER2 type,Luminal-HER2ともに21例ずつであった.超音波所見は,typeA1が26例,typeA2が14例,その他が2例であった.全症例中pCRは15例(35.7%)で得られており,超音波所見がtypeA1+その他では8例,typeA2では7例にみられた.HER2 typeとLuminal-HER2での超音波所見type別のpCRを別図に提示する.Luminal-HER2では,typeA1+その他とtypeA2のpCR率がそれぞれ3症例(20.0%),4症例(66.7%)であり,typeA2で有意な差をもってpCR率が高かった(p=0.0404).HER2 typeでは,tpeA1+その他とtypeA2のpCR率がそれぞれ5症例(38.5%),3症例(37.5%)であり,ほぼ同等の結果であった.
【考察】
今回の検討では,症例数が十分でなく,限られた解析となったが,HER2陽性乳癌のうち,luminal-HER2では超音波所見がtypeA2とその他の所見のものでpCR率に有意な差がみられ,治療前の超音波所見から治療効果を予測できる可能性が示唆された.