Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
乳腺 乳腺①

(S686)

乳腺超音波検査におけるShear Wave Elastographyの初期臨床経験

Preliminary experience of the Shear Wave elastography by breast ultrasonography

中村 俊一, 中屋 俊介, 常田 佳江, 山崎 知克, 武田 裕, 木村 和善

Shunichi NAKAMURA, Shunsuke NAKAYA, Yosie TSUNETA, Tomokatsu YAMAZAKI, Yutaka TAKEDA, Kazuyoshi KIMURA

JA北海道厚生連帯広厚生病院医療技術部放射線技術科

Department of Radiological Technology, Obihiro Kosei General Hospital

キーワード :

【目的】
Shear Wave Elastography(以下SWE)は組織の硬さを絶対的な弾性率で定量的評価が可能であり,びまん性肝疾患等で多く利用されている.一方,乳腺領域では用手的加振を利用した歪みイメージングが多く用いられているが,術者依存性や再現性が問題になることを経験する.近年は多くの超音波診断装置にSWEを搭載したものが登場し,乳腺領域でもその有用性が報告されている.今回我々は東芝メディカルシステムズ社が開発したSWEを乳腺超音波検査に使用する機会を得たので正常乳腺および乳腺腫瘤のせん断波伝播速度(m/s)を計測し,初期臨床経験として報告する.
【対象】
2015年4月から2015年9月までに当院にて乳腺超音波検査を施行し,細胞診または組織診断にて診断が確定した線維腺腫6例,浸潤性乳管癌2例,正常乳腺38例51乳房,平均年齢50.7±15.6歳である.なお臨床画像の使用に関しては,すべて匿名化し解析を行った.
【方法と検討項目】
Bモードにて正常乳腺と腫瘤部に関心領域を設定し,SWEを用いてせん断波伝播速度(m/s),弾性率(kPa),到達時間の等高線表示(Propagation)の3つの表示モードにより,定量的,視覚的評価を行った.関心領域の設定位置は到達時間の等高線表示を参考に信頼性の高い位置を選択した.
【結果】
SWEを用いたせん断波伝播速度(m/s),弾性率(kPa)の計測値は,正常乳腺:2.08±0.51m/s, 13.8±7.5kPa,腫瘤内部は線維腺腫:2.28±0.41m/s, 16.6±5.8kPa,浸潤性乳管癌:4.64±0.53m/s, 66.9±14.0kPaであった.カラーマップ表示ではせん断波伝播速度表示,弾性率表示の96.4%が表示可能であった.
【考察】
乳腺領域のSWEを用いた検討においてTozakiらは,せん断波伝播速度による良悪性の鑑別に関して報告している.悪性病変のせん断波伝播速度は高値である傾向があり,確実に測定可能な腫瘍辺縁部にターゲットROIを設置し比較検討したところ,悪性病変の平均値は5.15m/sであり良性病変の平均値2.93m/sよりも有意に高値を示したと報告している.今回,我々の初期臨床経験では,せん断波伝播速度の平均値は正常乳腺2.08m/s,良性病変2.28m/s,悪性病変4.64m/sであり,症例数は少ないがTozakiらの報告と同様の傾向であった.今後は症例数の蓄積とせん断波伝播速度のカットオフ値等の検討も必要と考えられた.
【結語】
従来の用手による圧迫を利用して組織の変位を測定する既存のElastographyと異なり,SWEは簡便であり検者の手技に依存するところが少ないと思われた.また硬さの数値測定が可能であり,乳腺超音波検査おけるSWEの利用は多くの情報を付加する可能性が示唆される.