Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 診断:一般②

(S677)

Active Patient Trackerを使用した自動位置合わせシステムの有用性と課題

Usefulness and problems of the auto registration system using active patient tracker

田中 弘教, 高田 珠希, 川端 一美, 内橋 孝史, 池尾 光一, 山崎 之良, 田村 公佑, 李 兆亮, 宮崎 純一, 阿部 孝

Hironori TANAKA, Tamaki TAKATA, Kazumi KAWABATA, Takashi UCHIHASHI, Koichi IKEO, Koreyoshi YAMAZAKI, Kosuke TAMURA, Zhao LIANG, Junichi MIYAZAKI, Takashi ABE

宝塚市立病院消化器内科

Department of Gastroenterology, Takarazuka Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
Active Patient Trackerは,専用位置マーカーであるomniTRAXTM Active Patient Tracker(以下omniTRAX)を患者に張り付けてCT/MRIを撮像することで,Fusionシステム使用時の位置合わせが自動化される新技術である.2015年秋には位置センサ内臓プローブが登場し,さらに2015年12月よりはMRIでもこのシステムが使用可能となった.当院でも2015年11月末にこのシステムが導入され運用開始している.実際の運用では,CT/MRIを撮像した直後に検査/治療をする状況は少ないため,撮像終了後にomniTRAXを外し,検査/治療の際に再度取り付けて使用するケースが最も想定される.しかし,この方法では撮像時と検査時でomniTRAXの位置が完全に一致しない問題がある.さらに忙しい外来でのCT/MRI撮像時に,この取り付けをどのように運用するかという点も課題である.今回,こうした課題を解決すべく当院で行っているActive Patient Trackerの運用システムと工夫を紹介するとともに,有用性と課題を検討した.
【方法】
2015年12月にActive Patient Trackerを使用したUS検査/治療を行った10例(CT 8例/MRI 2例)を対象とし,以下の点について検討した.装置はLogiq E9 with XDclear2.0を使用した.
①患者への説明:CT/MRIを撮像する際にomniTRAXを取り付けて撮像することを専用の図解説明用紙を配布し説明した.②CT撮像時:CTベッドで仰臥位になり両手を挙上した後,omniTRAXを患者剣状突起部が中心となるように看護師が設置し撮像した.12月18日からは自作設置用スポンジカバーも使用した.③MRI撮像時:CTと同様の方法でomniTRAXを放射線技師が設置した.④治療/検査時:omniTRAX®を剣状突起部が中心となるように設置し,Active Patient Tracker機能を利用して自動位置合わせを行った.⑤自動位置合わせ機能の位置ずれの評価:呼吸変動がなく描出が容易なSMA根部に仮想US画像でまずGPSマーカー(#1)決定後,US検査画面でSMA根部にGPSマーカー(#2)をつけ,US画面上でこれらの2点間を綿密に計測し,位置ずれの程度を評価した.⑥上記検査時の問題点を検討した.
【結果】
設置時間は数例の経験のみで,すぐに10秒未満となり,設置困難症例はなかった.SMA根部で計測した位置ずれは8mm〜21mmであり,臨床上問題なく,その後の微調整も容易に可能であった.また自作スポンジカバーを使用するとCT撮像時のomniTRAXの安定性は格段に増し,開始時の位置ずれも,症例数はまだ少ないが15mmまでと更に小さくなった.Active Trackerの利点としては,スクリーニング時には特に必須となる体位変換や位置センサの移動にも影響を受けないことがあった.これによりVolume Navigation使用時のストレスが著しく軽減した.またスクリーニング検査の際に,病変部を客観的に示すことができることも大きな利点であった.一方で欠点は実際の検査時には剣状突起部の取り付けデバイスが検査の邪魔となり,一時的に取り外す必要があることなどがあげられた.
【考察】
今回の検討は初期経験であり症例数は少ないが,Active Patient Trackerを使用した自動位置合わせ機能の利点と課題を明らかにすることができた.この新システムには,まだ克服すべき課題が多くあるが,超音波検査の課題である「客観性」の克服を考える上で画期的なシステムである.治療時の使用中心であったFusion技術が,スクリーニングでも今後益々活用されるようになることが期待される.