Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 肝線維化⑤

(S671)

ElastographyおよびSonazoid®造影超音波を用いたアルコール性肝障害の検討

Evaluation of alcoholic liver disease using elastography and contrast-enhanced ultrasound with Sonazoid®

松清 靖1, 松井 哲平1, 和久井 紀貴1, 池原 孝1, 中野 茂1, 永井 英成1, 渡辺 学1, 住野 泰清1, 工藤 岳秀2, 丸山 憲一2

Yasushi MATSUKIYO1, Teppei MATSUI1, Noritaka WAKUI1, Takashi IKEHARA1, Shigeru NAKANO1, Hidenari NAGAI1, Manabu WATANABE1, Yasukiyo SUMINO1, Takehide KUDO2, Kenichi MARUYAMA2

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Toho University Ohmori Medical Center, 2Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Ohmori Medical Center

キーワード :

慢性肝障害の線維化診断のため,非侵襲的診断法であるエラストグラフィが広く用いられている.当院でもVirtual Touch Quantification(VTQ)を使用し様々な慢性肝障害の病態について検討している.検討の結果,VTQは線維化以外にも炎症や胆汁うっ滞,血流などの影響を受けることは諸家と同様の結果を得,報告してきた.そのような検討の中で,同じHCV,HBVの肝障害であってもそれにアルコールが関与すると肝の硬度はより硬くなり,実質灌流は動脈化傾向が強まるという印象を受けた.そこで今回我々は常用飲酒家以上の飲酒が肝臓の硬さならびに実質灌流動態に,実際どのような影響を与えるかを検討した.
【目的】
アルコールが肝硬度,肝血流動態(Perfusion Parametric Imaging: P-PI)に及ぼす影響を明らかとする.
【対象】
肝障害の原因がアルコール以外を除外され,アルコール性肝障害と診断された症例のうち,2回以上VTQおよびP-PIを行ったno flusher 9例.検査は1週間〜1年と観察期間は症例によって異なっていた.観察期間中6例は禁酒に成功し,3例は飲酒を継続していた.
【方法】
各症例でVTQおよびP-PIを行った.VTQはS5領域で6回測定しmedianを採用した.P-PIは門脈右枝と肝実質が描出できる部位でSonazoid®をボーラス静注後30秒間動画で保存.得られた動画からArrival-time Parametric Imageを作成し,さらに門脈のarrival-timeで2色に色分けした.門脈の到達時間より早い血流を赤,門脈到着以降の血流を青とすることで可視的に門脈-動脈バランスを確認できる手法である.赤が主体であれば動脈化していることとなる.
【結果】
VTQ:禁酒指導後のVs値の変化は平均0.72低下していた.禁酒できなかった症例のうち,1例は肝炎を繰り返し肝硬変へ進展しVs値も上昇した.
肝血流動態:9例中4例が動脈化をきたしており,残りの5例は門脈からの灌流が主体であった.動脈化4例の内訳は,アルコ−ル性肝炎が2例,臨床的に肝炎や肝硬変の変化をきたしていない症例が2例(断酒後2-3ヶ月で改善)であった.肝炎2例のうち1例は断酒に成功し約1年の経過で灌流は門脈優位となったが,他の1例は断酒できず肝硬変へと進展し動脈化は改善しなかった.
【考案】
アルコールによる肝障害はサイトカインや酸化ストレスなど様々な要因で生じる.肝障害を生じると細胞の水腫状変性,脂肪化,線維化,酸素需要増加により動脈血流が増加,肝炎を生じていれば壊死,炎症など様々な病態を呈する.今回の検討結果から,アルコール性肝障害と診断され禁酒できた症例の肝硬度は改善傾向を示した.短期間の観察で改善した症例では,禁酒することで水腫状変性が改善したことで肝硬度も低下したものと推測できる.長期間かけて徐々に改善している症例では,水腫状変性のような肝細胞自体の変化に加え,線維化が可逆的に改善している経過を観察しているのではないかと考える.肝血流動態の変化は,肝硬変に進展した症例およびアルコ−ル性肝炎症例および経過観察中に肝硬変へと進展した飲酒継続例において強い動脈化を認めた.肝炎症例では,強い炎症により惹起された変化と推測され,肝硬変例では門脈血流の減少に伴い代償性に動脈化し,さらにそれが助長された可能性が高い.
【結語】
アルコールは肝硬度および肝血流動態に影響を及ぼし,VTQやP-PIを用いた観察は病態の把握のためのツールとなる可能性が示唆された.