Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 診断・血流

(S670)

小児消化器領域におけるSuperb Micro-vascular Imagingの有用性の検討

Clinical evaluation of the Superb Micro-vascular Imaging in pediatric gastrointestinal lesions

大野 康治1, 柴田 有佳里2

Yasuharu OHNO1, Yukari SHIBATA2

1大分こども病院外科, 2東芝メディカルシステムズ株式会社営業推進部

1Dept of Surgery, Oita Children’s Hospital, 2Sales Promotion, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

【緒言】
最近開発されたドプラ技術のひとつであるSuperb Micro-vascular Imaging(SMI)により,微細な低速血流をreal-timeに観察することが可能となった.最近成人領域においてSMIの有用性が報告されはじめているが,小児領域における報告は少ない.今回,小児消化器領域においてSMI検査を行い,その有用性を検討したので報告する.
【対象と方法】
2015年3月から9月の間,小児56症例に対して,76回のSMI検査を施行した.使用装置は東芝メディカルシステムズ社製TUS-A300で,探触子は主としてPLT-704SBTリニア型プローブを用いて,消化器領域の微細血流を観察した.SMIにはカラー表示されるcSMI(color coded SMI)とモノクロ表示のmSMI(monochrome SMI)の2つのモードがあり,これらを必要に応じて使い分けた.また,カラードプラ法,ワイドバンドドプラ法(ADF:Advanced Dynamic Flow)を適宜併用して比較検討した.全症例とも鎮静なしの状態で検査を行った.
【結果】
56症例の性別は男38,女18であり,初回検査時年齢は1ヵ月から14歳(中央値4歳)であった.検査時の臨床診断(疑診を含む)は,川崎病20,急性虫垂炎10,慢性便秘8,鼠径ヘルニア4,アレルギー性紫斑病・肝機能傷害・急性肝炎・胆石症・胆道閉鎖・腸炎それぞれ2,胆嚢ポリープ・腸閉塞症それぞれ1,であった.対象臓器は肝臓28,小腸・結腸9,虫垂9,直腸9,胆嚢1,であった.肝臓の末梢領域では,微細低速血流を極めて良好に描出することが可能であった.一部の症例では末梢血管数の減少,微細血管の枯れ枝状変化・らせん状蛇行,シャント血流と考えられるアーチ状血管,などが確認できた.小腸・結腸の観察では,ヘルニア嵌頓・絞扼性イレウスなど,それぞれの病態に応じた腸管壁の血流の変化を描出できた.虫垂では,炎症の程度に応じた血流変化の観察が容易であり,急性虫垂炎の治療方針の決定に有効であった.慢性便秘の直腸壁や,胆石症の胆嚢壁などの血流変化も検討したが,これらに関しては有用な情報は得られなかった.
【考察】
血流評価法として広く用いられてきたColor DopplerやADFは,空間分解能が十分でなく,frame rateが10/sec程度と少ないため,細部の観察には問題があると考えられている.最近,新しい血流評価法としてmotion artifactを低減させ,低流速血流を高分解能,高frame rateで捉えるSMIの有効性が報告されるようになってきた.
今回,小児消化器領域におけるSMIの有用性を検討し,以下にあげる利点・欠点があると考えられた.
利点:1)Color DopplerやADFと比較してartifactの少ない血流画像を得ることができる.2)造影剤を使用せずにある程度詳細な血流描出が可能である.3)肝臓などの実質臓器における微細血流構築の描出にはきわめて優れたものがある.
欠点:1)小児では充分な呼吸停止ができないため,静止画像の撮影が困難なことが多い.2)1)と関連して,いわゆる加算画像の作成も困難なことが多い.3)血流方向を確認できないため,微細血管領域における動脈と静脈の鑑別が困難である.
以上より,SMIは小児消化器領域においてもきわめて有用な検査法であると考える.