Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 肝線維化④

(S657)

肝血行動態と肝硬度変化を観察し脳死肝移植を施行したB型急性肝不全昏睡型の1例

Early changes of liver stiffness and hemodynamics in hepatitis B virus related acute liver failure: a case report

藤原 裕大1, 黒田 英克1, 阿部 珠美1, 三上 有里子2, 武田 智弓2, 滝川 康裕1

Yudai FUJIWARA1, Hidekatsu KURODA1, Tamami ABE1, Yuriko MIKAMI2, Chiyumi TAKEDA2, Yasuhiro TAKIKAWA1

1岩手医科大学内科学講座消化器内科肝臓分野, 2岩手医科大学中央臨床検査部

1Division of Hepatology, Department of Internal Medicine, Iwate Medical University, 2Central Clinical Laboratory, Iwate Medical University

キーワード :

【はじめに】
B型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化を原因とした急性肝不全昏睡型亜急性型に対し,肝硬度と血行動態を経時的に測定し脳死肝移植まで追跡し得たので,摘出肝の病理学的所見をあわせて報告する.
【症例】
62歳,男性.
【主訴】
全身倦怠感
【既往歴】
61歳:関節リウマチ
【現病歴】
前医にて平成27年3月より関節リウマチに対しmethotrexateならびにmethylprednisoloneの内服加療が開始されたが,HBVに関しては未対応であった.10月11日に全身倦怠感を認め,症状出現から7日後に近医にて肝障害を指摘され当科紹介入院となる.
【現症】
体温37.4度,血圧152/82 mmHg,脈拍65回,意識レベルは清明,肝周囲に腹水貯留を認めた.生化学検査はT-Bil 22.7 mg/dl,AST 471 IU/l,ALT 673 IU/l,PT 29.2%,NH3 54μg/dlであった.
【入院後経過】
超音波機器はACUSON S2000(Mochida Siemens Medical Systems),Aplio500(Toshiba Medical Systems)を使用.入院時の剪断弾性波伝播速度(Vs)は2.3±0.2 m/sで,その後緩徐に上昇し,第15病日には2.9±0.3 m/sにまで上昇した.また,入院時の肝動脈収縮期血流速度(Vmax)は45.0 cm/sであったが,第15病日には75.0 cm/sに上昇.肝動脈血管抵抗係数(RI)は0.72から0.79に上昇し,ソナゾイド®造影超音波を用いたarrival-time parametric imagingでは肝実質灌流の動脈化を認めた.入院後エンテカビルの投与とステロイドパルス療法を施行したが,第12病日にII度の肝性脳症を併発.さらにARDS,急性腎不全,急性膵炎を併発し,人工呼吸器管理下で持続濾過透析を施行したが徐々に肝萎縮は進行した.以後も肝再生の徴候は認めず,第26病日に脳死肝移植が施行された.摘出肝は重量780 mgと著明に萎縮しており,表面に斑状出血を認めた.病理組織学検討では肝全体に亜広汎壊死,炎症,高度胆汁鬱滞と線維化を認めた.また,中心静脈周囲の出血と肝細胞脱落を認めた.電顕像では,壊死部の類洞構造の破壊,豊富な膠原線維と細胞残屑を認めたほか,脂肪滴様の空胞を有する貪食細胞を認めた.
【考察】
本例のVsや肝血流は,De novo HBVによる急性肝不全の病態を反映してダイナミックな変化を示した.急性肝不全における肝硬度上昇や血流変化は,壊死炎症や類洞微小循環障害を原因とする肝類洞内圧の上昇など複雑な肝組織変化が影響したと推測される.肝硬度と肝血流は急性肝不全の予後指標のひとつとも考えられ,若干の文献考察を交えて報告する.