Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 消化管

(S656)

小児潰瘍性大腸炎の活動性評価における腹部超音波の有用性の検討

Usefulness of ultrasonography for evaluating mucosal inflammation in pediatric patients with ulcerative colitis

赤松 正野1, 青松 友槻1, 奥平 尊1, 梶 恵美里1, 井上 敬介1, 2, 余田 篤1, 玉井 浩1

Masano AKAMATSU1, Tomoki AOMATSU1, Takeru OKUHIRA1, Emiri KAJI1, Keisuke INOUE1, 2, Atsushi YODEN1, Hiroshi TAMAI1

1大阪医科大学小児科, 2市立ひらかた病院小児科

1Department of Pediatrics, Osaka Medical College, 2Department of Pediatrics, Hirakata City Hospital

キーワード :

【はじめに】
潰瘍性大腸炎(UC)は,大腸の原因不明の慢性腸炎である.現在UCの活動性評価のゴールドスタンダードは下部消化管内視鏡(CS)であるが,小児で頻回に施行することは難しい.今回,UCの活動性評価における腹部超音波(US)の有用性を前方視的に検討した.
【対象と方法】
対象は2014年10月から2015年10月に当科でUSとCSを同時期に施行した小児UC患者.USは前処置をせずに施行し,その後CSを施行した.USの評価項目は,①壁厚,②層構造(正常,不明瞭),③ハウストラ(正常,減弱または消失),④粘膜下層のエコー輝度(正常,低下).CS所見はMattsの内視鏡所見分類を用いて粘膜炎症を,なし(M1),軽度(M2),中等度(M3),高度(M4)に分類し,上行結腸,横行結腸,下行結腸,S状結腸の4区域について,区域内で所見の最も顕著な部位でUS所見とCS所見を比較した.
【結果】
35例45検査(平均12.5歳,男/女:20/25検査,全大腸炎型42検査,遠位大腸炎型3検査)で解析した.比較可能な区域数は上行結腸39区域,横行結腸41区域,下行結腸42区域,S状結腸45区域(合計167区域).壁厚の中央値(四分位範囲)は,M1(n=85),M2(n=50),M3(n=33)でそれぞれ1.1mm(0.9mm-1.4mm),1.9mm(1.3mm-2.8mm),3.7mm(2.3mm-5.2mm)であり段階的に有意に高値となった.M4の区域はなかった.ROC解析で算出した2.0mmをカットオフ値とすると,M1とM2以上を区別する精度は,感度65.1%,特異度93.9%,陽性予測値91.5%,陰性予測値72.6%,正確度79.4%であった.壁厚≧2.0mmかつM2以上の区域,つまりUSで活動性ありと正診された区域(n=54)について解析すると,層構造不明瞭は5区域(M2:2/23(8.7%),M3:3/31(9.7%),p=0.90),ハウストラ減弱または消失は42区域(M2:11/23(47.2%),M3:28/31(90.3%),p<0.01),粘膜下層のエコー輝度低下は15区域(M2:4/23(17.4%),M3:11/31(35.5%),p=0.14)でみられた.
【考察】
壁厚はCS活動性(Matts分類)と関連性が見られ,カットオフ値を2.0mmとするとM1群とM2以上の群の区別は比較的高い精度で行うことができた.ただし,M2群とM3群では重なりが大きいため壁厚のみで区別することは困難と考えられたが,壁厚が2.0mm以上の場合はハウストラの所見を加味することでM2とM3を区別できることが示唆された.層構造や粘膜下層のエコー輝度については症例数を増やして引き続き検討が必要である.US偽陰性,つまり壁厚が2.0mm未満にも関わらずCSで活動性がみられた29区域のほとんどは層構造,ハウストラ,粘膜下層のエコー輝度が正常であり,US所見だけで粘膜炎症を正確に診断するのは困難と考えられた.
【結語】
USはUCの活動性評価に有用であり,壁厚はある程度内視鏡的重症度と関連する.壁の構築に関する所見を加味することにより,さらに正確に重症度を評価できる可能性がある.壁肥厚がない場合は,バイオマーカーなど他の指標と組み合わせることが粘膜炎症の診断に必要と考えられた.