Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 消化管

(S656)

炎症性腸疾患の経過観察における消化管超音波検査の位置づけの検討

Consideration of the positioning of the intestinal ultrasonography in the follow-up of inflammatory bowel disease

橋本 喜代美1, 池田 敦之2, 青木 由美子1, 杉村 真弓1, 松本 愛1, 畦地 英全2, 藤井 茂彦2, 日下 利広2, 國立 裕之2

Kiyomi HASHIMOTO1, Atsuyuki IKEDA2, Yumiko AOKI1, Mayumi SUGIMURA1, Ai MATSUMOTO1, Hidemasa AZECHI2, Shigehiko FUJII2, Toshihiro KUSAKA2, Hiroyuki KOKURYU2

1京都桂病院検査科, 2京都桂病院消化器内科

1Department of Clinical Laboratory, Kyoto Katsura Hospital, 2Department of Gastroenterology, Kyoto Katsura Hospital

キーワード :

【はじめに】
近年増加傾向にある炎症性腸疾患(IBD)に対して消化管超音波検査(IUS)は有用とされてはいるが,一般臨床においてどのように組み込んでいくかは明らかではない.当院では2012年以降IUSを積極的に施行し,腹部超音波検査の全体の約15%の症例に消化管の観察を行っている.それに伴いIBDに対するIUSを行う機会も増加している.今回,我々は当院におけるIUSの現状を評価するとともに,IUSとその他の所見が相関した症例と乖離した症例を提示することで,一般臨床においてのIUSの位置づけを検討することを目的とした.
【対象と方法】
当院にて潰瘍性大腸炎(UC)または,クローン病(CD)と診断,加療された症例のうちIUSを施行している症例を対象とした.IUSは主治医の判断にてオーダーされ施行した.リニアプローブを使用し,消化管壁肥厚の最大値を計測し,その減少をもって改善と判断した.また,周囲の脂肪織輝度も参考所見とした.超音波機種はGE社製LOGIQ E9,HITACHI社製Avius,TOSHIBA社製Xario XGを用いた.
【症例1】
30歳代,女性.下部消化管内視鏡検査(CS)・病理組織診断にてUCと診断.IUSでは第3層優位の壁肥厚を認めた.5-ASAにて治療開始するも症状の改善なく,IUSでも壁肥厚の改善は認められなかった.その後ステロイド開始し症状軽減,IUSでも壁肥厚は徐々に改善傾向となった.
【症例2】
40歳代,男性.CD増悪にて入院.IUSでは回腸末端と全大腸に壁肥厚あり.ステロイド,6-MP,G-CAPにて加療し,症状,IUS所見ともに改善.その後の再燃時もIUSにて壁肥厚を認めた.
【症例3】
30歳代,男性.他院にてUCの診断にてステロイド加療後再燃し当院へ紹介.IUSにて第3層優位の壁肥厚を認め,一部層構造が不明瞭で高度の炎症の存在を疑った.CSにて出血を伴う潰瘍が多発し,絶食・TPN,5-ASA,ステロイド,G-CAPにて加療.加療開始後,CSでは治癒傾向であったが,IUSでは壁肥厚の改善は乏しかった.
【症例4】
50歳代,男性.小腸透視にて小腸の狭窄と縦走潰瘍の所見あり小腸型CDと診断され,栄養療法,5-ASAにて加療.IUSでは回腸壁肥厚と狭窄に伴うイレウス所見を認めた.インフリキシマブ導入,狭窄に対しての切除術を施行しながらも臨床症状は約2年間完解を維持しているが,IUSでの壁肥厚の消失は遺残している.
【考察】
IBD診療において,IUSは内視鏡検査に比べ低侵襲であり,頻回な検査が可能である.当院では約50件/年のIBDに対してのIUSを施行していたが,オーダーの時期や頻度は主治医や症例によって様々であった.症例1,2のように他所見とIUS所見が相関する例が多く,このような例においてIUSは非常に有用である.特に,入院中の治療開始・変更の前後などの短期間での経過観察法としては治療方針の決定の一助となり,現状における一部の内視鏡検査はIUSに置き換えることが可能であると考えられた.一方,少数例ではあるが,症例3,4のように他所見とIUS所見が乖離する例も認めた.これらの原因としては,CSでの粘膜治癒とIUSでの壁肥厚改善時期に差がある例が存在することや,特にCDで寛解時も壁肥厚が遺残する例があると考えられた.IUSを施行する時期や頻度を統一した上で,症例を蓄積し更なる検討が必要と考えられた.
【結語】
IBD診療において,IUSは入院中の治療開始・変更の前後などの短期間での経過観察法として有用であると考えられた.