Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 消化管

(S655)

超音波検査による鼠径ヘルニアの鑑別診断

The diagnosis of inguinal hernia by ultrasonography

毛利 康一

Koichi MORI

名古屋第一赤十字病院一般消化器外科

Surgery, Nagoya Daiichi Red Cross Hospital

キーワード :

【背景と目的】
鼠径ヘルニアは鼠径部腫瘤を呈する代表的疾患であるが,その診断は主に視触診,術中によってなされている.当院では鼠径部腫瘤の診断に2010年6月より超音波検査(US)を導入し,約5年が経過したのでその結果を評価する.
【対象と方法】
対象は2010年6月から2014年5月の間に鼠径部腫瘤に対してUSを施行した703人である.超音波診断,指触診所見との比較,内鼠径ヘルニア・外鼠径ヘルニア・大腿ヘルニアの鑑別について検討した.検査時の体位は仰臥位および立位とし,症状の有無にかかわらず対側鼠径部の観察も行った.鼠径部の腹壁に裂隙を認め大網や腸管などの腹腔内臓器の脱出を認めた場合,鼠径ヘルニアと診断した.鼠径ヘルニアと診断したときは下腹壁動脈を同定し,ヘルニア門が下腹壁動脈の内側/外側のどちらに存在するかで内・外鼠径ヘルニアの鑑別を行った.大腿ヘルニアが疑われる場合は,①横操作で大腿静脈の内側にヘルニア臓器が観察されること,②下腹壁動脈起始部より尾側にヘルニア門を認め,ヘルニア嚢が尾側へ伸びることで鑑別診断を行った.
【結果】
1)外科医の視触診による診断と超音波診断を比較すると,視触診により鼠径ヘルニアと診断された648例のうち38例(5.9%)ではUSで腹壁裂隙から腹腔内臓器の脱出を認めず,Nuck管(精索)水腫(29例),子宮円索静脈瘤(4例),子宮内膜症(2例),その他(3例)と診断された.これらの多くは手術適応のない疾患であった.2)またUSで両側鼠径ヘルニアと診断した133例のうち74例(56%)は,外科医の視触診では片側の鼠径ヘルニアを指摘されていなかった.2)手術所見にて確定診断が得られた538例の鼡径ヘルニアにおいて超音波検査の正診率は,外鼠径ヘルニアは97%,内鼠径ヘルニアは72%,大腿ヘルニアは75%,混合型ヘルニアは80%で,全体で88%であった.
【結論】
鼠径部腫瘤に対するUSは手術適応の決定に有用である.USの内・外鼠径・大腿ヘルニアの正診率88%という数字は満足すべきものではないが,今後も誤診した症例を再検討することで課題を明らかにしていく必要がある.