Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 消化管

(S653)

腹部超音波検査による滑脱型食道裂孔ヘルニアの検討

Ultrasonographic assessment of the sliding hernia

藤岡 正幸1, 藤本 喜代成2, 原田 智2, 井口 宗威2, 辻本 裕之2, 中沢 啓2, 大島 淳子1, 小川 佳子1, 坂本 洋城2

Masayuki FUJIOKA1, Kiyoshige FUJIMOTO2, Satoshi HARADA2, Munetaka IGUCHI2, Hiroyuki TSUJIMOTO2, Kei NAKAZAWA2, Jyunko OOSHIMA1, Keiko OGAWA1, Hiroki SAKAMOTO2

1医療法人大植会葛城病院超音波室, 2医療法人大植会葛城病院消化器内科

1Department of Ultrasound, Katsuragi Hospital, 2Department of Gastroenterology, Katsuragi Hospital

キーワード :

【はじめに】
滑脱型食道裂孔ヘルニアは食道裂孔ヘルニア全体の約90%を占め,加齢による食道裂孔の緩みや肥満などによる腹圧上昇が主な原因としてあげられる.無症状では治療を必要としないが,近年増加しつつある胃食道逆流症の重要な原因の一つとなり,軽症例でも逆流症状を伴う場合においては治療の対象となる.そこで,今回我々は,滑脱型食道裂孔ヘルニアの診断における腹部超音波検査(US)の有用性を検討した.
【対象と方法】
2015年9月から12月の4か月間に,当院の人間ドックにてUSおよび上部消化管内視鏡検査(GIF)を実施した62名(男性34名,女性28名,年齢57.0±11.3歳)を対象とした.全症例においてGIF施行前にUSを行い,Bモード断層像にて仰臥位および左側臥位における腹部食道の最大直径と,その差を計測した.確定診断はGIFを用い,滑脱型食道裂孔ヘルニアの有無により陽性群と陰性群の2群に分け検討を行った.また,滑脱型食道裂孔ヘルニアとUS所見の関連性について,本疾患の原因となる肥満の指標であるBMI値を全例で計測し,BMI 25以上を肥満群として比較した.使用機器はSSA-660AおよびTUS-A500(TOSHIBA社製)で,3.5MHzのコンベックス型プローブを使用した.
【結果】
USにおける腹部食道最大径はヘルニア陽性群と陰性群で,それぞれ平均11.2mm±2.4mmと9.2mm±2.0mm,体位変換による腹部食道径の差は,それぞれ平均1.6mm±1.1mmと0.8mm±0.5mmであり,いずれも両群間に有意差を認めた(p<0.05).また体位変換による腹部食道径の差を本疾患の診断基準とした場合,カットオフ値1.3mm以上で正診率が最も高く,感度63%,特異度87%,正診率77%であった.また,1.5mm以上とした場合は感度50%となるが,特異度は92%に上昇した.さらに,オッズ比による肥満群との比較では,肥満群のOR 4.71に対し腹部食道径の差が1.3mm以上でOR 11.00,1.5mm以上ではOR 11.67となり,US所見がより強い関連性を示す結果であった.
【考察】
滑脱型食道裂孔ヘルニアは無症状なことが多く,診断には侵襲的な検査である上部消化管造影検査やGIFなどを要するため,人間ドックなどで偶然に発見されるか,ある程度症状が進行してから診断されることが多いと考える.USは低侵襲で簡便に行える検査法であり,今回の結果では,USを用いた体位変換による腹部食道径の測定が,滑脱型食道裂孔ヘルニアの初期診断において有用な指標となりえる可能性が示唆された.