Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 胆・膵①

(S650)

超音波内視鏡下穿刺吸引法における迅速細胞診の有用性についての後方視的検討

Retrospective analysis of the utility of rapid on-site cytologic evaluation for endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration

宜保 憲明, 野々垣 浩二, 柳瀬 成希, 大北 宗由, 倉下 貴光, 南 正史, 西川 貴広, 榊原 聡介, 下郷 友弥, 印牧 直人

Noriaki GIBO, Koji NONOGAKI, Shigeki YANASE, Muneyori OKITA, Takamitsu KURASHITA, Masashi MINAMI, Takahiro NISHIKAWA, Sousuke SAKAKIBARA, Tomoya SHIMOZATO, Naoto KANEMAKI

大同病院消化器内科

Department of Gastroenterology, Daido Hospital

キーワード :

【はじめに】
超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)は,2010年4月に保険収載されてから一般病院にも急速に普及し,胆膵領域のみならず消化管粘膜下腫瘍や腫大リンパ節などに対しても広く実施されるようになった.
ただ,確実な病理診断には標的病変からの十分な検体採取が必要であり,迅速細胞診(Rapid On-Site cytologic Evaluation; ROSE)の活用が診断能向上に有用であると報告されている.
当院では,2014年5月にShorr染色によるROSEを導入した.Shorr染色は,Diff-Quik染色と比較し所要時間が長いものの,核小体やクロマチンを詳細に認識できることから良悪性の鑑別が可能と言われている.
【目的】
当院におけるEUS-FNAの成績を,ROSE(Shorr染色)併用の有無を軸に後方視的に検討する.
【対象】
2011年4月から2015年12月までに当院で行ったEUS-FNA 141例.
平均年齢は66.5±11.3歳で,男女比は82:59.標的臓器は,降順に,膵68例(47%),胃25例(19%),腹腔リンパ節16例(12%),縦隔リンパ節8例(6%),後腹膜リンパ節8例(6%).
【使用機器】
観測装置はEU-ME1(Olympus社),スコープはGF-UCT260(Olympus社)を使用した.穿刺針は,Expect 22G(Boston Scientific社),NA-200H 22G(Olympus社)のいずれかを用いた.
【方法】
病理診断に必要な組織成分ないし細胞成分が認められるものを「適正検体」と定義した上で,適正検体を採取できた症例の割合を「検体採取率」とした.更に,適正検体を採取できた症例に対する,EUS-FNA病理診断と最終診断とが一致した症例の割合を「正診率」として算出した.
そして,平均穿刺回数,検体採取率,正診率,偶発症発生率を,ROSE非併用群とROSE併用群とでそれぞれ比較検討した.
【結果】
全体の成績は,平均穿刺回数1.95±0.05session,検体採取率95.7%,正診率92.6%,偶発症発生率0.7%であった.
ROSE併用の有無での比較においては,平均穿刺回数が非併用群より併用群で有意に少なかった(2.08±0.06session vs 1.72±0.09session; p=0.002).検体採取率は,ROSE非併用群93.4%,ROSE併用群100.0%で,その差に有意傾向が認められた(p=0.06).正診率は,両群間に有意差は認められなかったものの,ROSE非併用群よりROSE併用群の方が高かった(88.3%vs 94.0%;p=0.29).偶発症発生率は,ROSE非併用群0.0%,ROSE併用群2.0%(菌血症1例)であった.
【考察】
EUS-FNAにおいて,ROSEの併用は,必要な穿刺回数を減らす一方で,検体採取率と正診率の向上に寄与し得ると考えられた.検体の大部分が壊死や変性で占められている症例もあり,更なる正診率の向上には造影の併用に検討の余地があると思われた.
ROSEの有無に関わらず,EUS-FNAの偶発症発生率は極めて低く,その安全性が再確認された.