Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 胆・膵①

(S649)

胆嚢壁肥厚を有する疾患の鑑別におけるEUS-FNAの有用性の検討

The clinical benefit of endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration(EUS-FNA)for gallbladder diseases with the wall thickness

井元 章

Akira IMOTO

大阪医科大学第二内科

nd Department of Internal Medicine, Osaka Medical College

キーワード :

【背景・目的】
近年検診の普及により,無症状で胆嚢壁肥厚を指摘される頻度が増加している.胆嚢癌の30-40%は胆嚢壁肥厚を伴うが,黄色肉芽腫性胆嚢炎に代表される良性疾患との鑑別は困難なことも多い.胆嚢壁肥厚に対する診断手段としては,これまでERCP下胆嚢胆汁細胞診が広く行われてきたが,手技的な成功率は高いとは言えず,偶発症である急性膵炎のリスクが高いなどの問題もある.一方近年新しい病理組織採取法としてEUS-FNAが普及してきており,高い診断能と低い偶発症を示す優れた検査法として確立されつつある.そこで今回は,胆嚢壁肥厚を有する症例の鑑別診断におけるEUS-FNAの有用性を検討することを目的とした.
【対象と方法】
当科で胆嚢壁肥厚に対し精査をおこなった連続41例をENGBD群と,EUS-FNA群に分類し,比較した.ENGBDは,radifocus guidewireを用いて胆嚢管を突破し,5Fr.tubeを胆嚢内に2-3日留置することで行った.その間胆嚢胆汁細胞診を施行した.EUS-FNAは,胃もしくは十二指腸から肥厚した胆嚢壁が安全に穿刺できる場合のみ22G針を用いて施行した.壁肥厚内でのストロークを心がけ,ROSEを併用した吸引細胞診を施行した.胆嚢壁肥厚は全例CTで測定し,1領域の壁肥厚を“Focal”,2領域以上の壁肥厚を“Diffuse”として定義した.病理診断はmalignancyもしくはsuspicion of malignancyを悪性,atypical cellsもしくはno malignancyを良性とし,最終診断は外科的切除標本もしくは,経過観察例では臨床経過により判断した.
【結果】
ENGBD群25例,EUS-FNA群16例.胆嚢壁はENGBD群で12.5mm±12.0nn,FNA群で11.8±5.2mm(P=0.90),最終診断はENGBD群で悪性7例,良性18例,FNA群で悪性8例,良性8例(P=0.36)であった.感度,特異度,正診度はENGBD群で各々71%,94%,88%に対し,FNA群ではすべて100%であった.また,偶発症はENGBD群で5例に急性膵炎を認めたのに対し,FNA群では1例も認められなかった(P=0.08)
【結語】
胆嚢壁肥厚に対するEUS-FNAの診断能は高く,安全に施行可能であった.今後胆嚢壁肥厚を有する疾患の病理組織学的診断の有用なoptionとなり得ると考えられた.