Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 エラストグラフィ・他

(S641)

病変モデルラット肝臓を用いた組織弾性と音響特性の関係性の検討

Evaluation of the relationship of tissue elasticity and acoustic characteristics using the lesion model rat liver

村上 顕央1, 吉田 憲司2, 岸本 理和3, 小畠 隆行3, 丸山 紀史4, 山口 匡2

Kenoh MURAKAMI1, Kenji YOSHIDA2, Riwa KISHIMOTO3, Takayuki OBATA3, Hitoshi MARUYAMA4, Tadashi YAMAGUCHI2

1千葉大学大学院工学研究科, 2千葉大学フロンティア医工学センター, 3放射線医科学総合研究所重粒子医科学センター病院, 4千葉大学医学研究院

1Guraduated School of Engineering, Chiba University, 2Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University, 3Research Center for Charged Particle Therapy, National Institute of Radiological Science, 4Guraduated School of Medicine, Chiba University

キーワード :

【背景・目的】
生体組織の質的情報を診断に応用する手段として,近年では超音波やMRIを用いたエラストグラフィ法などによる定量診断が期待されている.しかし,生体組織の機械的な物理特性や音響特性などの質的情報についての総合的な関係性は十分に解明されておらず,確定診断法としての信頼度は高い状態にはない.そこで本研究では,肝炎および脂肪肝における細胞および組織構造レベルでの質的情報の関係性を定量的に関連付けることを目指し,同一個体の肝臓について超音波による弾性評価と機械計測による粘弾性評価をそれぞれ行った.また,バイオ超音波顕微鏡を用いて細胞単位での音響特性を評価し,それらを病理所見と併せて総合的に評価した.
【方法】
コントロールおよびNASHモデルのラットについて,それぞれ5個体を計測対象とした.麻酔下において開腹したラット肝臓に対し,VTTQ(ACUSON S2000,SIEMENS)によりin vivoでの横波音速計測を行った.肝臓摘出後,虚血した肝臓の一葉を直径20 mm,厚さ3±1 mm程度の円柱形にトリミングし,レオメータ(AR-G2,TA Instruments)による貯蔵弾性率(弾性)および損失弾性率(粘性)の動的特性の評価を行った.また,同一個体の異なる葉について1 mm程度の厚さにトリミングし,その割面をバイオ超音波顕微鏡(本多電子,AMS-50SI改)において中心周波数80 MHzのPVDF-TrFE振動子を用いて計測し,音響インピーダンスを算出した.さらに,同一の葉をホルマリン固定後に9μmに薄切し,同顕微鏡において中心周波数250 MHzのZnO振動子を用いて計測し,縦波音速を算出した.
【結果・考察】
各計測において算出された物性値を下表に示す.組織構造レベルでの機械的な粘弾性計測において,NASH肝は正常肝と比較して硬い傾向を示した.一方で,細胞レベルでの微視的観察においては縦波音速が遅く,柔らかい傾向を示している.これらの違いは,各測定方法の分解能の違いによって観測対象となる組織のサイズが異なっていることが一因であると考えられる.
今後,著明な線維化が認められる肝臓や,単純性脂肪肝などの症例について解析を行い,今回対象とした複数種の組織が混在したNASHモデルでの結果と合わせることで,各組織の固有物性および多種組織の混在による臓器サイズでの物性変化について検証する.
本研究の一部はJSPS科研費15H03030,15H01107の助成を受けた.