Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 エラストグラフィ・他

(S640)

Share wave elastographyの検討:肝嚢胞周囲の肝実質について

Share wave elastographic finding of hepatic cyst

長沼 裕子1, 石田 秀明2, 長井 裕3, 渡部 多佳子2, 大山 葉子4, 小川 眞広5

Hiroko NAGANUMA1, Hideaki ISHIDA2, Hiroshi NAGAI3, Takako WATANABE2, Yoko OHYAMA4, Masahiro OGAWA5

1市立横手病院消化器科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3NGI研究所, 4秋田厚生医療センター臨床検査科, 5日本大学病院消化器肝臓内科

1Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3New Generation Imaging Laboratory, 4Medical Laboratory, Akita Kousei Medical Center, 5Department of Gastroenterology and Hepatology, Nihon University Hospital

キーワード :

【はじめに】
Shear wave elastography(SWE)は当初はびまん性肝疾患の診断に広く用いられたが最近では肝腫瘍の鑑別疾患を目的にした利用も散見されるようになりつつある.しかし,その評価・方法はまだ安定したものではなく更なる検討が必要と思われる.今回我々は肝嚢胞周囲をSWEで観察し,若干の知見を得たので報告する.
【対象と方法】
A)外来USで観察した,慢性肝疾患のない肝嚢胞症例6例(男性1例,女性5例,年齢45-87(平均60.8)歳)について,肝嚢胞周囲の肝実質のSWE値を測定し検討した.測定部位は原則として肝表面から1cm以深とし,ROIの大きさは約26×26mmを基本とした.SWEを測定するTargetROIの大きさは直径5-8mmとし,ROI内を移動させることにより計測した.B)くりぬいたコンニャク内に水風船をおき膨らませて,その周囲のSWE値をA)の方法に準じて測定し検討した.使用装置:東芝社製Aplio 500.1-6MHzコンベックスプローブ,5-12MHzリニアプローブ.
【結果】
A)肝嚢胞の大きさは12-120(平均43)mm.SWE値は嚢胞辺縁周囲が離れた位置のそれよりも高値で,嚢胞の辺縁周囲で比較的きれいな帯状のゾーンとして高い部位が分布していた.嚢胞辺縁と離れた位置のSWEの差を計算すると0.41〜1.98(平均1.02)m/sであった.また,嚢胞辺縁のSWE値の標準偏差が大きくなる傾向にあった.B)水風船の深さは約4cm.コンニャクのみのSWE値は1.9 6m/s +/- 0.10 m/s,水風船を膨らませたとき水風船から離れた場所では2.20 m/s +/- 0.21 m/s,水風船辺縁周囲では3.71 m/s +/- 0.63 m/sであった.実験でも水風船周囲のコンニャクのSWE値が高くなり,臨床例と同様の傾向を示した.
【考察】
我々は,前回の第88回本学術集会で,各種ファントームを用いSWEは極めて精度の高い検査法でその測定値も再現性に富む安定した値を示す事を発表した.しかし同時に,ファントームをわずかに圧迫する事でその測定値が上昇することも発表し,これは圧迫による測定箇所の密度上昇によるものであろう,と考察した[1].このことは,SWE上,肝内の限局性病変に関しても,病変部のみならずその周囲も影響を受ける可能性を示している.このような考えから最も構造が簡単な肝嚢胞を対象に嚢胞に接した周囲肝組織部をSWEで観察し嚢胞に接した肝実質のSWEは嚢胞から離れた部位のSWEよりも高値になるという結果が得られた.これは当初の想定を裏付ける結果となった.更にこの現象をファントームを用い検討したところ同様に,膨らませた水風船に接した部位のSWEは離れた部位のSWEよりも高値になった.このことより,肝内限局性病変のSWEを検討する際にはその部位に留意する必要があるとともに,肝実質のSWEを測定する際にも,限局性病変の周囲を避けるなどのくふうが必要と思われる.
【参考文献】
1)石田秀明,他:肝share wave測定値に関する検討.超音波医学第88回学術集会プログラム講演抄録集.2015; 42 : S594.
2)山越芳樹,山本敦史,弓仲康史:せん断波伝搬による組織弾性計測.超音波医学.2015; 42: 589-597.