Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 肝:症例②

(S638)

特徴的な超音波所見を呈した肝紫斑病の1例

A case of peliosis hepatis

児玉 亮

Ryo KODAMA

JA長野厚生連篠ノ井総合病院消化器内科

Gastroenterology, JA Nagano Koseiren Shinonoi General Hospital

キーワード :

症例は62歳,女性.全身倦怠感,食欲不振を主訴に受診した.既往歴として30歳で子宮癌に対し子宮摘出術を受けている.また,31歳でSLEと診断されステロイド内服を継続している.喫煙歴は1日20本を20年間,飲酒歴は週4日ビール700ml.2011年12月頃から食事がとれなくなってきた.同時期より立ちくらみや息切れを自覚するようになった.全身倦怠感,食欲不振を主訴に当院膠原病内科を受診した.血液検査でHb 8.3 g/dlと貧血を認めた.緊急でCT検査を施行したところ,肝右葉に巨大な多血性腫瘤と内部に血腫を疑う所見を認め,精査目的で当科に入院となった.腹部超音波検査で肝右葉に明瞭な境界を持つhyperechoの領域を認め,さらにHyperechoの領域内にHypoechoの領域を認めた.造影CT検査では肝右葉に単純で不均一なlow density areaを認め,造影早期に動脈性にかなり不均一に染まり,後期相まで持続する領域を認めた.内部には造影不領域があり,単純でHigh densityを示すため出血が疑われた.また,S3下部や外側区などにも右葉と同様の病変を認めた.造影MRI検査では病変内部は早期より内部に不規則な濃染を認め,海綿状血管腫の造影パターンの典型とは異なると思われた.画像所見から稀な疾患ではあるが肝紫斑病が考えられた.貧血はこれの破裂と考えたが,貧血の進行はなく自然止血したと思われた.腹部血管造影検査では過去の報告と同様鑑別は困難であった.確定診断のため肝生検を考慮したが,出血のリスクと経皮的針生検では組織が十分に得られないとの報告が多いことから経皮的生検は困難と思われた.腹腔鏡下生検・開腹生検は患者の希望で行わなかった.その後ステロイドは継続したまま経過観察しているが,4年間の経過で変化は認めていない.肝紫斑病は肝実質に比較的小型で不整形の嚢状血液貯留域が多発性に生じた状態であり,蛋白同化ステロイド,慢性消耗性疾患,悪性腫瘍などが原因となりうる.誘因が明らかな肝紫斑病の場合誘因を除去することで病変は縮小するため予後は良好とされているが,稀ながら死亡例も存在する.本例は過去の報告に比し比較的病変が大きく,出血を来したという点で稀である.また,超音波所見が特徴的であり診断に寄与したと思われたので報告する.