Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 門脈・脾

(S634)

脾リンパ管腫例の再検討

Re-evaluation of splenic lymphangioma

伊保内 綾乃1, 星野 孝男1, 峠 弘治2, 遠藤 和彦2, 高橋 正人3, 大山 葉子4, 三浦 百子4, 紺野 純子4, 石田 秀明5, 長沼 裕子6

Ayano IBONAII1, Takao HOSINO1, Kouji TOUGE2, Kazuhiko ENDO2, Masato TAKAHASHI3, Youko OHYAMA4, Momoko MIURA4, Jyunko KONNO4, Hideaki ISHIDA5, Hiroko NAGANUMA6

1秋田厚生医療センター消化器内科, 2秋田厚生医療センター消化器外科, 3秋田厚生医療センター臨床病理科, 4秋田厚生医療センター臨床検査科, 5秋田赤十字病院超音波センター, 6市立横手病院消化器内科

1Depatment of Gastroenterology, Akita Kohsei Medical Center, 2Department of Digestive Surgery, Akita Kohsei Medical Center, 3Department of Clinicopathology, Akita Kohsei Medical Center, 4Department of Clinical Laboratory, Akita Kohsei Medical Center, 5Center of Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 6Depatment of Gastroenterology, Yokote Muncipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
リンパ管腫は全身の多臓器から発生しうる良性腫瘍で,腹部に関しても日常の超音波検査中にまれに遭遇することがある.その多くは脾と腸間膜であり,あまり臨床的に大きな意味を有さないことが多いとされている.今回我々はこの考えが妥当か,脾リンパ管腫19例を対象に再検討し若干の知見を得たので報告する.
【使用装置】
東芝社製AplioXG, Aplio 500. GE社製:LOGIQE9.
【超音波造影法】
ソナゾイド®造影剤(第一三共社)を用い,通常の肝腫瘍造影法に準じた.
【対象と方法】
超音波など画像上典型的な所見を呈し脾リンパ管腫と診断された19例((男6例,女13例).年齢17−90歳(平均70歳))を対象に,その臨床像を再検討した.
【結果】
1)有症状例は19例中2例(10.5%).1例は50歳代女性,右上腹部痛で来院.超音波上4cm大の脾リンパ管腫に加え肝門部を中心に上腹部ほぼ全体を占める巨大なリンパ管腫がみられた(症例1).もう1例は10歳代男性,部活中頸部に違和感を感じ受診.超音波上1cm弱の脾リンパ管腫が数個みられ,全身CTで骨内にもリンパ管腫が認められGorham-Stout syndromeと診断され現在専門施設で経過観察中である(症例2).
2)経過観察中に脾リンパ腫の発生を認め脾摘出術が施行された症例で脾リンパ管腫例診療上重要な意味を持つと思われ下記にその経過を記述する.70歳代女性,以前から脾リンパ管腫として,超音波検査で経過観察されていた.採血データは安定し自覚症状なし.超音波上,脾内に,以前からのリンパ管腫の所見に加え,新たに1-2cm大の低エコー腫瘤が多発,Bモードと造影超音波所見からリンパ腫を最も疑った.CTでは両者の鑑別に苦慮した.脾摘出術が施行され,リンパ管腫と(largeBcell)リンパ腫と最終診断された.
【考察】
今回の再検討により,従来臨床的意義の乏しいと思われていた脾リンパ管腫の診療に関しても,注意すべき点があることが分かった.それは,1)若年例では,全身にリンパ管腫が分布するGorham-Stout syndromeを念頭に入れ全身CTでリンパ管腫の分布を把握し骨病変による2次的損傷を予防する診療体制を構築することが必要である.2)リンパ腫の合併に関しては,文献上数例の報告があり,いずれも既存のリンパ管腫の上にリンパ腫が発生したケースである.慢性のリンパ流出障害による刺激がリンパ腫を引き起こした,と推定されている.このため,脾リンパ管腫に関しては,やはり定期的な経過観察は必要と思われる.