Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 門脈・脾

(S633)

肝硬変と血液疾患の血流動態から見た脾硬度と脾腫の検討

Examination of the mechanism of spleen stiffness change and the splenoma by the haemodynamic comparison between cirrhosis and blood disorder

西村 純子1, 西村 貴士1, 2, 吉田 昌弘1, 東浦 晶子1, 柴田 陽子1, 橋本 眞里子1, 會澤 信弘2, 鹿毛 政義3, 西口 修平2, 飯島 尋子1, 2

Junko NISHIMURA1, Takashi NISHIMURA1, 2, Masahiro YOSHIDA1, Akiko HIGASHIURA1, Youko SHIBATA1, Mariko HASHIMOTO1, Nobuhiro AIZAWA2, Masayoshi KAGE3, Syuhei NISHIGUCHI2, Hiroko IIJIMA1, 2

1兵庫医科大学超音波センター, 2兵庫医科大学肝・胆・膵内科, 3久留米大学病院病理診断科・病理部

1Depertment of Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine, Hyogo, Japan, 2Hyogo College of Medicine, Hyogo, Japan, Hyogo College of Medicine, Hyogo, Japan, 3Department of Diagnostic Pathology, Kurume University Hospital, Fukuoka, Japan

キーワード :

【目的】
門脈圧亢進症を伴う肝硬変ではVirtual Touch Quantification(VTQ)による脾Vs値(Spleen stiffness: SS)が高値となることを報告してきたが,その原因の検討は十分ではない.肝硬変と血液疾患ではともに脾腫を伴うが,血流動態には差があることが予想される.肝硬変と血液疾患の血流動態の比較によりSSや脾臓サイズに影響する要因を検討した.
【対象】
臨床的に肝硬変と診断された患者19例(全例食道・胃静脈瘤あり),白血病等の血液疾患患者14例,健常ボランティア(健常人)13例
【方法】
SS(m/s)はACUSON S2000または3000を用いて測定した.千葉大学第一内科の式よりSpleen index(SI, cm2)を計測,また血流動態について超音波ドプラ法にて以下の項目を計測した.脾動脈(SA)の血流量(vol:最高血流速度平均・血管短軸像を正円と仮定して得た血管断面積・0.62・60/1000,l).心拍出量(CO:心拍数・左室流出路断面積・左室流出路血流速波形の時間速度積分,l).脾静脈(SV)および門脈(PV)の血流量(vol:最高血流速度平均・血管断面積・60 / 1000,l)とうっ血係数(CI:血管断面積/平均血流速度平均,cm・s).以上の項目を三者間で比較し,またSSおよびSIとの相関関係を検討した.
【結果】
①SSは肝硬変のみ有意に高値(p<0.01)であった.②SAvolおよびCOは肝硬変と血液疾患で有意差はなく,両疾患ともに健常人より有意に増大(p<0.05)していた.SVvolは血液疾患のみ増大傾向(vs健常人p<0.01,vs肝硬変p=0.07)であった.PVvolは有意差を認めなかった.SVCIは肝硬変のみ上昇傾向(vs健常人p<0.01,vs血液疾患p=0.06)であった.PVCIは肝硬変のみ有意に高値(p<0.01)だった.③SSと相関を認めたのはPVCI(r=0.560,p=0.01)で,SAvol(r=0.377,p=0.01)およびSVCI(r=0.376,p=0.01)とは弱い相関を認めた.④SIと強い相関を認めたのはSAvol(r=0.783,p<0.01)で,CO(r=0.694,p<0.01)およびSVvol(r=0.625,p<0.01),SVCI(r=0.541 p<0.01),PVCI(r=0.566,p<0.01)とも相関を認めた.PVvol(r=0.428,p<0.01)とは弱い相関を認めた.以上より,肝硬変と血液疾患ではともにSAvolが増大しており,SAvolとSIには相関があることから,脾動脈血流量の増大が脾腫に影響していることが示唆された.また,特に肝硬変ではSVvolについては有意な増大を認めず,PVCIおよびSVCIが有意に上昇し,PVCIとSSには相関があることから,脾臓のうっ血がSS増大ならびに脾腫に関与することが示唆された.
【結語】
脾Vs値の上昇は脾臓のうっ血の影響が大きいことが示唆された.脾腫の原因としては肝硬変と血液疾患ともに脾動脈血流量の増大が関与しており,とくに肝硬変では脾臓のうっ血も考えられた.