Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 門脈・脾

(S631)

門脈ガスのドプラ所見

Doppler findings of portal gas

長沼 裕子1, 石田 秀明2, 長井 裕3, 渡部 多佳子2, 大山 葉子4, 小丹 まゆみ5, 小川 眞広6

Hiroko NAGANUMA1, Hideaki ISHIDA2, Hiroshi NAGAI3, Takako WATANABE2, Yoko OHYAMA4, Mayumi KOTAN5, Masahiro OGAWA6

1市立横手病院消化器科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3NGI研究所, 4秋田厚生医療センター臨床検査科, 5市立横手病院臨床検査科, 6日本大学病院消化器肝臓内科

1Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3New Generation Imaging Laboratory, 4Medical Laboratory, Akita Kousei Medical Center, 5Medical Laboratory, Yokote Municipa Hospital, 6Department of Gastroenterology and Hepatology, Nihon University Hospital

キーワード :

【はじめに】
門脈ガスのUS所見は①B-modeで門脈内を移動する微小な点状高エコー,②カラードプラでカラーの門脈外への不規則なはみ出しを示す火焔状所見,③FFTでドプラシフト上振り切れる信号,とされている.今回我々は,多くの門脈ガスのカラードプラ所見はプローブに向かう単一な赤色であり,同様にFFTで振り切れる信号の結石のようにカラーモザイクを示さない,という一見矛盾した表示であることに注目し,この点について臨床例と実験を通し検討したので報告する.使用装置:東芝社製Aplio 500,GE社製LOGIQE9,日立アロカ社製Preirus.
【対象と方法】
A)臨床例の検討:USで門脈ガスと診断した11例(男性8,女性3,年齢35-82(平均65.1)歳,疾患の内訳は腸炎6例,イレウス1例,外傷1例,胆管炎1例,糖尿病1例,肝硬変1例)を対象にi)カラードプラ所見(流速表示)におけるカラーの色調,ii)門脈内からえられたFFT波形を検討した(9例で検討).B)実験的検討:脱気水をいれた水槽内で用手的に作成したバブル30-50μmを直径8mmの穴をあけたファントムの下方から内径1.40mmのカテーテルを用いて一個ずつ通し,上記のi), ii)について検討した.iii)水槽内においてドプラのサンプルボリューム内を瞬時に通過する竹串と通過するのに ボール紙の表面を反射面とし,血流同等に一定時間通過するように動かして得られたFFTを比較検討した.
【結果】
A)i)11例全例で赤系の均一な色調を呈し,ii)FFT波形を検討できた9例中全例でドプラシフト上振り切れる線状の信号を呈した.B)i)単色(赤系)を呈し,カラーモザイクは呈さなかった.ii)線状の振り切れる信号であった.iii)竹串が瞬時に通過した場合は細い線状のFFT信号になり,ボール紙の場合は定常流波形と同じような持続するFFT信号を呈した.
【考察】
FFTでは,サンプル幅を通過する反射体の周波数を計算するために128〜256回の送信時間を必要とし,その間,サンプル幅内をバブル一個のみが通過するような場合には,データ数が足りず,周波数偏移を決定できず,線状の振り切れた信号になることが考えられた.結石でみられるようなランダムな周波数偏移が存在するカラーモザイクのFFTと一見似ているが,異なる所見であり,読み解きに注意が必要である.
【文献】
1.Ijuin H, Tokitoku D, Atsuchi Y, et al. Flaming portal vein as a new color Doppler sign of portal gas: report of two cases. J Med Ultrasonics 2008; 35: 119-123.
2.Watanabe T, Ishida H, Komatsuda T, et al. Portal gas in a diabetic patient under pharmacotherapy with as alpha-glucosidase inhibitor: report of a case with emphasis on US findings. J Med Ultrasonics 2009; 36: 207-210.