Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 肝:一般①

(S630)

胆管拡張を伴わない肝転移例の胆道系酵素上昇機序に関する1視点

Liver metastasis with hepatic dysfunction, but without biliary dilatation

石田 秀明1, 小松田 智也1, 八木澤 仁1, 渡部 多佳子1, 長沼 裕子2, 大山 葉子3, 小川 眞広4, 鈴木 克典5, 宮内 孝治6, 榎本 克彦7

Hideaki ISHIDA1, Tomoya KOMATSUDA1, Hitoshi YAGISAWA1, Takako WATANABE1, Hiroko NAGANUMA2, Yoko OHYAMA3, Masahiro OGAWA4, Katunori SUZUKI5, Takaharu MIYAUCHI6, Katuhiko ENOMOTO7

1秋田赤十字病院超音波センター, 2市立横手病院消化器内科, 3秋田厚生医療センター臨床検査科, 4日本大学病院消化器内科, 5山形県立中央病院消化器内科, 6秋田赤十字病院放射線科, 7秋田赤十字病院病理部

1Department of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Akita Kousei Medical Center, 4Department of Gastroenterology, Nihon University Hospital, 5Department of Gastroenterology, Yamagata Prefectural Central Hospital, 6Department of Radiology, Akita Red Cross Hospital, 7Department of Pathology, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

肝転移は通常肝機能異常を来しにくく肝機能異常があっても軽微である.一方,肝転移がmass effectで胆管拡張を来すと胆道系酵素上昇をきたす事が知られており,この場合,超音波検査で肝内胆管拡張が容易に描出される.この両者は理解しやすい状態であるが,実際の臨床では,胆道系酵素上昇が認められるが,肝内胆管拡張が超音波でみられないケースもあり,その総合的解釈に難渋する事がある.今回,我々は,その状態を理解するときの1視点になりえる超音波所見を認めたので若干の知見を得たので報告する.
使用診断装置:東芝社製:AplioXG, Aplio500, GE社:LOGIQ E9.超音波造影剤はソナゾイド®(第一三共社)を用い,通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
【対象と方法】
対象は,過去1年に超音波検査を施行した肝内胆管拡張がみられなかった肝転移164例(男性94例女性70例,年齢31〜91(平均68)歳)で,原発巣胃癌26例,大腸癌89例,膵癌10例,胆管癌6例,その他33例である.これらの例に関し,胆道系酵素上昇の有無と超音波所見を比較した.なお,この検討では,胆道系酵素(ALP,など)が通常の3倍以上のものを胆道系酵素上昇群として扱った.
【結果】
胆道系酵素非上昇群(−)は153例,上昇群(+)は11例であった.(-)群のうち動脈門脈短絡を認めた症例は0例(0/153,0%),(+)群で動脈門脈短絡を認めた例は5例(5/11,%)であった.
【まとめと考察】
肝内において,胆管,肝動脈,門脈は併走または近接し走行する.そのため胆管炎例が容易に門脈血栓形成を惹起したり,肝生検後の動脈門脈短絡が生ずる.また,肝転移例では,転移巣の浸潤やmass effectで周囲胆管が閉塞や圧迫により末梢部が拡張する.超音波画像はその優れた空間分解能から一般に肝内胆管が1-2mm程度になると拡張胆管として描出可能である.このことは,逆に,それより軽微な,肝転移巣の周囲胆管への影響は超音波画像上明らかな異常胆管像として表現されないことを示している.今回の検討結果はその軽微な状態の理解を助けるものである.つまり,この軽微な状態では転移巣が動脈,門脈を圧迫しこれが動脈門脈短絡となってカラードプラで表現される,というものである.このことは同時に併走する胆管も同程度に圧迫していることを示している.つまり,この転移巣周囲にみられた動脈門脈短絡の存在は,非存在例に比し胆管の圧迫程度が増していることを示唆している.この考えがある程度妥当と思われるのは,胆道系酵素上昇群のみでこの動脈門脈短絡がみられ,非上昇群では全くみられなかった事である.また,胆道系酵素上昇群でも動脈門脈短絡の出現率がやや低率であったのはまだドプラ感度に改善の余地が有ることを示している.さらなる改善したドプラ装置による同様の検討が今回の結果を引き上げてくれることが期待される.