Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 肝:一般①

(S628)

肝がん検診団による肝がん検診の果たす役割

The role of hepatocellular carcinoma(HCC)screening, conducted by HCC screening association

川西 輝明1, 2, 美馬 聰昭1, 2, 首藤 龍人2

Teruaki KAWANISHI1, 2, Satoaki MIMA1, 2, Ryuushi SHUDOU2

1北海道医療生活協同組合札幌緑愛病院肝臓センター, 2肝がん検診団肝がん検診センター

1Liver Center, Hokkaido Health Coop Sapporo Ryokuai Hospital, 2Hepatocellular Carcinoma Screening Center, Hepatocellular Carcinoma Screening Association

キーワード :

【目的】
肝がんの早期発見・早期治療をめざし,2007年11月から2015年まで超音波を主体とした肝がん検診を全道各地にて実施してきた.この間の肝がん検診時に作成した診療情報提供書から,肝がん検診の役割について報告する.
【対象と方法】
肝がんのハイリスク群と考えられるHBVキャリア,肝機能障害を有するもの,肝疾患の既往歴を有するもの,輸血歴を有するもの,脂肪肝の指摘を受けたことのあるもの,肝臓専門医に一度もかかったことのないものを対象とした.
検診は有志により肝がん検診団を編成実施し,地元の患者会や行政機関との協力にて実施した.受診者は,肝がん検診団や患者団体とともに市町村の協力をえて募集した.検診団は,超音波検査にあたる医師,検査技師,看護師,地区保健師など10人前後で組織した.
以前行っていた肝がん検診とは規模が3分の1となり,超音波検査は,検診ごとに2から3台を使用し,各装置ごとに医師または検査技師を1から2人を配置した.
腫瘍マーカーとしてはAFP,PIVKAⅡを,ウイルスマーカーとしては,HBs抗原,抗体,HBe抗原,抗体,HBc抗体,HCV抗体を測定した.なお肝機能検査としては,AST,ALT,LDH,ALP,γ-GTP,ChE,TTT,ZTTの8項目を測定した.AFP100ng/ml以上のものについては超音波検査陰性でも精密検査をする努力をした.
また比較対象として,1981年から2000年まで実施した北海道におけるハイリスク群を対象とした肝がん検診のデータを用いた(旧肝がん検診とする).
【結果と考察】
8年間の受診者総数は,のべ3919人,実人数1413人であった.腫瘍精査やウイルス性肝炎の治療を勧め診療情報提供書を作成した回数は162回である.
実人数1413人(%は実人数比),初回受検時のウイルスマーカーの比率は,HBs抗原陽性者は,379人(26.8%),HBs抗原かHBc抗体陽性者は919人(65.0%),HBc抗体強陽性者は465人(32.9%),HCV抗体陽性者は199人(14.1%)であった.旧肝がん検診では実人数比はB型肝炎キャリアでは2割程度であったことから,今回検討時期の肝がん検診ではB型肝炎ウイルスキャリアの比率が高くなっていることがわかる.肝がん初回診断例は7人で全受診者数比では0.18%,実人数比では0.50%であった.この比率は旧肝がん検診の実人数比1.3%と比べ低値(p値<0.05)である.
肝がん発見率の違いの理由は今回の検討では示していないが,B型肝炎キャリアの比率が上がっていること,ウイルスキャリアの受診者は初回受診者の比率が低く,過去の肝がん検診受診者が多いことと繰り返し受診していることなどが原因であると思われる.
診療情報提供では,腫瘍精査以外の肝炎治療精査の依頼が30件,B型肝炎治療の検討が7件,C型肝炎治療が22件,PBC疑いが1件であった.肝がんの発見のみでなく,肝がんの予防につながる治療を受けるよう繰り返し療養相談で説明を促して治療へつながる形を追求できる検診であることがわかる.
【結論】
肝がん検診により肝がんのみ発見みならず,肝臓の早期治療へむけて医療機関との橋渡しが可能であった.肝がん検診にて療養相談を行うことで,地元の医療機関と連携を行え,肝がんの予防につながる肝炎の治療につなげることが出来た.