Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 診断:一般①

(S628)

外側音響陰影発生機序の再考

Re-evaluation of the Lateral shadow outbreak mechanism

長井 裕1, 石田 秀明2, 長沼 裕子3, 小川 眞広4

Hiroshi NAGAI1, Hideaki ISHIDA2, Hiroko NAGANUMA3, Masahiro OGAWA4

1NGI研究所, 2秋田赤十字病院超音波室, 3市立横手病院消化器科, 4日本大学病院消化器肝臓内科

1NGI Laboratory, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 4Department of Gastroenterology and Hepatology, Nihon University Hospital

キーワード :

【はじめに】
我々は,以前より診断中に発生する各種アーチファクトについて,その発生機序を追求してきている.肝細胞癌(HCC)や肝嚢胞の側方に線状無エコー帯が出現し,一般的に外側音響陰影(lateral shadow,以下LS)と呼ばれている.LSの発生機序として,以前より病変辺縁における超音波の屈折があげられてきたが,詳細に関してはいまだ不明な点が多い.今回我々は,LSの出現機序を再検討し,若干の知見を得たので報告する.使用装置:東芝社製Aplio 500 platinum.中心周波数3.75MHzコンベックスプローブ,中心周波数7.5MHzリニアプローブ.
【実験方法】
(1)音速の異なる媒質ファントムを用意し,屈折を発生させて発生の有無を評価した.(2)肝実質に見立てたファントムに円筒状の穴を作り,その中に音速の異なる媒質(うずらの卵,アクリル筒,コンニャク,等)を置き屈折させて評価した.(3)同様の実験において,ファントムの穴の境界面の反射状態を変えて(ガーゼで覆う,卵の薄皮で覆う,等)評価した.
【結果】
(1)音線が明確で,送信波と反射波の経路が同じ屈折では,LSの発生が見られなかった.(2)屈折対象である媒質の形状だけではLSの発生誘因では無いことを確認できた.(3)屈折対象の媒質との境界面の条件により,LSの発生を確認できた.
【考察】
音響原理として音線が屈折する場合,反射波は送信波の進行経路をたどって,振動子に戻ってくる.この理論を正しいとすると,後方エコー画像が歪むことはあっても,LSが発生することはありえず,屈折だけでは説明できない箇所がでてくる.LSが発生するためには,送信波が戻れないような現象,つまり音響エネルギの消失が発生しなければならない.LSの発生機序の仮説として「屈折と反射が同時に起こりえる環境において,送信波の散乱による減衰が発生する」である.今回の実験は,これらの証明として,音線が確保されている場合,または確保されていることが想定される場合ではLSの発生は無く,特に側面近辺において散乱が想定される場合ではこれが発生することの証明ができた.ただし,本実験において正確にはLSの有無ではなく,強弱という考え方のほうが正しい.