Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 診断:一般①

(S627)

櫛状エコーの発生機序に関する考察(2)

Consideration on the mechanism of comb-like echo: Part 2

神山 直久1, 住野 泰清2, 丸山 憲一3, 松清 靖2, 篠原 正夫2

Naohisa KAMIYAMA1, Yasukiyo SUMINO2, Kenichi MARUYAMA3, Kiyoshi MATSUKIYO2, Masao SHINOHARA2

1GEヘルスケア超音波製品開発部, 2東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 3東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部

1Ultrasound Division, GE Healthcare, 2Dept of Gastroenterology and Hepatology, Toho University Omori Medical Center, 3Dept of Clinical Functional Physiology, Toho University Omori Medical Center

キーワード :

一般的なBモード検査の際に,高度の脂肪肝やNASH症例では肝実質に櫛状エコーが高頻度に観察される.我々はこの櫛状エコーの発生機序について研究を行ってきた[1]が,本稿はその続報である.
【目的】
「櫛状エコーになり得るアーチファクト(仮説)」としてはいくつか挙げることができる.今回はそれらの仮説を臨床画像的に解析し,櫛状エコーの発生機序を明らかとする.
【方法】
[仮説1]肝臓外から発生する音響陰影である.[仮説2]肝臓内の血管壁から発生する音響陰影.[仮説3]肝臓の血管内で音波の屈折により発生する音響陰影.[仮説4]肝表面の凹凸から発生する音響陰影.[仮説5]肝実質部の(血管以外の)構造から発生する音響陰影.
仮説1に関しては,櫛状エコーを観察した症例に対して,プローブを保持した状態で被検者に呼吸を指示し,プローブと肝臓間の組織は不動のまま肝臓のみを滑動させる.これを動画像で記録し,最大輝度保持(MIP)法で再構成する.仮説2〜5に関しては,櫛状エコーを観察した症例に対し,動画像を記録し,断面内のみならず奥行き方向の連続性なども観察する.また送信焦点を変化させ櫛状エコーの変化を観察する.対象は2014年8月から2015年10月に大森病院で超音波検査を行った52例(うち高度脂肪肝15例).使用装置はLOGIQ E9,プローブC1-6-D(3.5MHz凸)を用い,肝臓を右肋骨弓下あるいは右肋間走査から描出した.
【結果と考察】
仮説1の検討:ライン状に観察された音響陰影の多くは,肝の呼吸移動MIP画像に残存し,肝臓外から由来するものであることが示された.これらは送信焦点を浅部に移動すると強調され,腹膜・腹筋層の不均一構造から発生したものと考察される.この音響陰影は肝疾患とは無関係であり,実際に低度脂肪肝や更に健常肝においても観察されることから,「櫛状エコー」の定義には含まれないものであることがわかる.
仮説2:いくつかの音響陰影の起点には高輝度エコーが確認されることで検証できたが,このような輝点が確認できない場合が圧倒的に多く,また脂肪肝の有無に関わらず発生しているため,これも「櫛状エコー」から除外してよいことがわかる.
仮説3:仮説1,2で説明が付かなかったライン状音響陰影について,起点の位置を三次元的に追跡観察したところ,ほぼ全例,血管に連続していることが知られた.これは,脂肪肝に伴う肝実質の音速低下が血管内血液との音速差を増大させた結果生じた屈折現象であると推論でき,「櫛状エコー」の1つであることが示唆された.
仮説4:肝表面の凹凸から発生するように見えた音響陰影は,ほぼ全例仮説1に含まれた.また脂肪沈着70%以上の症例においては単純性脂肪肝を含む全例で櫛状エコーが確認され,凹凸の有無に関わらず出現していた.若杉等の報告[2]によれば,高周波プローブを用いれは硬変肝の表面凹凸から音響陰影が発生すること知られており,今回の症例においても発生の可能性は否定できないが,腹部用凸プローブを用いた場合,事象的には仮説3に比べて頻度は極少ないと推測された.
仮説5:仮説1〜4では説明できない現象について消去法的に分類されることを予想したが,櫛様陰影のほとんどが上述の仮説で証明でき,該当するものは見つからなかった.ただし肝実質の音速低下によって,線維化,再生結節なども屈折現象の対象となる可能性は否定できず,今後の課題としたい.
【結語】
高度脂肪肝により音速が低下した肝実質と血管内血液間の屈折現象が,櫛状エコー発生の一つの要因である.
【文献】
1.神山他,88th日超医42,S591(2015).
2.若杉他,超音波医学26(12)1185-1195(1999)