Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 その他:症例

(S623)

造影超音波検査で繊維性血管芯の描出が可能であった胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)の1例

A case of IPNB which was available for the depiction of the fibrous blood vessel core by contrast-enhanced ultrasonography

丸山 雅史1, 宮島 正行1, 木村 岳史1, 徳竹 康二朗1, 藤澤 亨1, 森 宏光1, 松田 至晃1, 和田 秀一1, 伊藤 哲也2

Masafumi MARUYAMA1, Masayuki MIYAJIMA1, Takefumi KIMURA1, Kojiro TOKUTAKE1, Toru FUJISAWA1, Hiromitsu MORI1, Yoshiaki MATSUDA1, Shuichi WADA1, Tetsuya ITOH2

1長野赤十字病院消化器内科, 2信州大学消化器内科

1Gastroenterology, Nagano Red Cross Hospital, 2Gastroenterology, Shinshu University

キーワード :

【背景】
胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)は肝内外の胆管内に発生する乳頭状腫瘍で,狭い繊維性血管芯を中心とした病変とされている.これまでに繊維性血管芯に対する画像評価の報告は乏しい.我々は術前の造影超音波検査により繊維性血管芯が診断可能であった症例を報告する.
【症例】
74歳,男性.2010年10月に人間ドックの腹部超音波検査にて肝内胆管拡張を指摘され当科受診,左肝内胆管を主座におく粘液産生性腫瘍が疑われたが手術希望なく経過観察された.2015年3月の腹部超音波検査にて左肝内胆管の腫瘍の増大を認めたため精密検査を施行した.
【検査と経過】
腹部超音波検査BモードではB4付近に基部をもつ30mm大の乳頭状腫瘍を認め腫瘍は乳頭側胆管に鋳型状に進展しており,近傍には拡張した胆管に連続して嚢胞性病変を認めた.パワードプラ,カラードプラ法では腫瘤内部に血流は描出されなかった.造影超音波検査ではソナゾイド®静注直後より腫瘍の中心に銛状の数本の細い血管芯が明瞭に描出され,時間経過とともに血管芯を軸とした腫瘍内の血流が描出された.ERCP,経口胆道鏡ではB4を根部とする粘液産生性の乳頭状腫瘍が左肝管に乳頭状に発育しており,B4付近の拡張した胆管には乳頭状上皮が進展していた.B2/B3分岐部と左肝管起始部の胆管上皮は正常であった.CT, MRI, PET検査を行いB4付近に限局したIPNBと診断し肝左葉切除術を施行した.術後標本では肉眼所見上腫瘍は左肝管の本管に限局しており浸潤は認めなかった.顕微鏡所見上腫瘍部では粘液産生の高円柱状異型細胞が乳頭状あるいは管状となって増生しており,中心部に繊維性の血管が走行していた.嚢状に拡張したB4の起始部も同型細胞に裏打ちされていた.垂直浸潤は認めず,肝外胆管への水平進展も認めなかった.免疫染色では腫瘍細胞はMUC1(-), MUC2(+), MUC5AC(-), CK7(+), CK20(-)でありIPNB,境界病変,中等度異型,intestinal typeと診断した.
【考察】
IPNBは胆管癌の前癌・早期癌病変として認知されている.IPNBの組織において繊維性血管芯は特徴的所見であると思われ腫瘍組織内の血管,血流の描出は診断に有用であると考える.今回,我々は造影超音波検査を用いてIPNBの特徴的所見である繊維性血管芯の評価が可能であった症例を経験した.これまでにIPNBの腫瘍内血流を評価した報告は少なく,本所見は診断の一助となる可能性が考えられた.