Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 肝線維化③

(S618)

肝臓における超音波組織弾性測定の機種間差の検討

Comparison of Transient elastography and Shear wave elastography for assessing liver elasticity

若林 倭1, 2, 工藤 悠輔2, 3, 西田 睦2, 3, 堀江 達則1, 2, 岩井 孝仁2, 3, 表原 里美2, 3, 佐藤 恵美1, 2, 高杉 莉佳2, 3, 小川 浩司4, 坂本 直哉4

Yamato WAKABAYASHI1, 2, Yusuke KUDOU2, 3, Mutsumi NISHIDA2, 3, Tatsunori HORIE1, 2, Takahito IWAI2, 3, Satomi OMOTEHARA2, 3, Megumi SATOU1, 2, Rika TAKASUGI2, 3, Kouji OGAWA4, Naoya SAKAMOTO4

1北海道大学病院放射線部, 2北海道大学病院超音波センター, 3北海道大学病院検査・輸血部, 4北海道大学病院消化器内科

1Division of Radiology, Hokkaido University Hospital, 2Diagnostic Center for Sonography, Hokkaido University Hospital, 3Division of Laboratory and Transfusion Medicine, Hokkaido University Hospital, 4Department of Gastroenterology and Hepatology, Hokkaido University Hospital

キーワード :

【背景】
肝線維化診断において無侵襲に計測可能な超音波エラストグラフィが普及しつつある.現在までに各社より様々なエラストグラフィ装置が開発されているが,その機種間差には不明な点がある.
【目的】
今回,新たに開発された東芝メディカルシステムズ社製のShear wave with Smart maps(SwSm)とFibroScan®(TE)を用いて肝弾性値を計測し,それらを前向きに比較・検討すること.
【対象】
対象は2015年10月から12月の間に肝弾性度測定を行った患者のうち,SwSmとTEを同時に計測し得た肝疾患患者54例.対象の肝疾患成因はウイルス性肝炎(HBV 12例,HCV19例),非アルコール性脂肪性肝疾患/肝炎(NAFLD/NASH)14例,自己免疫性肝炎5例,原発性胆汁性肝硬変4例.対象の年齢の中央値は64歳(範囲36-80).
【方法】
使用機種および探触子は東芝メディカルシステムズ社製Aplio500TM(version 6),PVT-375BTおよびECHOSENSE社製FibroScan®,M probe.測定方法はB modeガイド下で肝S5領域付近の血管が入らず,実質が広く描出される肋間を選択し,TEにより10回測定した.続いて,同一肋間でSwSmを施行した.SwSmの計測は肝表面から約1cm深部に約3cm×3cmのカラーマップを設定し,ワンショットスキャンにて5回行った.Twin view表示にて伝播表示画像を参照し,Shear Waveが均等に伝搬している部位に対し,直径1cmの円形ROIを2ヶ所に設定し計測した.いずれの装置においても計10回・個の計測値の中央値(median)[kPa]を評価に用いた.TEは,測定成功率が60%未満かつまたは四分位範囲/中央値が30%を超える測定は計測困難例とした.SwSmでは,計測値毎に変動係数(CV: coefficient of variation)を算出し,20%以上となった計測値が6個以上の症例を計測困難例とした.検討項目は(1)SwSmとTEの相関,(2)計測困難例を除外した症例の相関(3)SwSmとTEの計測困難率と影響因子の検討,統計学的解析にはPeasonの相関係数,t検定を用いた.尚,皮膚肝被膜間距離(SCD)が遠く,ROIの設定が困難な症例(3例)は対象から除外した.本研究は院内倫理委員会の承諾を得ている.
【結果】
(1)全51例のSwSmとTEとの相関はr=0.65(p<0.01)であった.(2)計測困難例を除外した43例における相関はr=0.85(p<0.01)であった.(3)SwSmの計測困難例は15.7%(8/51例), TEの計測困難例は0%(0/51例)であった.計測困難例と適切例の比較では,それぞれSCD[mm]は19.4±3.8, 15.0±3.1でP=0.001と有意差を認めた.性別,AST,ALT,総ビリルビン,FIB4 indexには有意な差はみられなかった(p>0.05).
【考察】
計測困難例を除外することにより,SwSmとTEには強い相関を認め,SwSmはTEとほぼ同様に肝弾性度の評価が可能と考えられた.今後多数例の検討で補正係数を求めることにより,計測値を同様な値として評価可能な可能性が示唆された.SwSmの計測困難例はSCDが厚い場合にみられ,既報と一致した.
【結語】
SwSmを用いた肝組織弾性度はTEとの強い相関関係を認めた.