Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 肝線維化①

(S610)

Shear wave elastographyで経過を観察し得た自己免疫性肝炎の3例

3 cases of autoimmune hepatitis that were followed up with Shear wave elastography

大川 修, 須田 季晋, 北濱 彰博, 草野 祐実, 小堀 郁博, 須藤 梨音, 行徳 芳則, 玉野 正也

Osamu OKAWA, Toshikuni SUDA, Akihiro KITAHAMA, Yumi KUSANO, Ikuhiro KOBORI, Rion SUDO, Yoshinor GYOTOKU, Masaya TAMANO

獨協医科大学越谷病院消化器内科

Gastroenterology, Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital

キーワード :

【緒言】
Shear wave elastography(SWE)は,組織中のShear wave(SW)伝搬速度を測定することによって組織の弾性を計測する技術であり,肝疾患における線維化の推測に有用である.今回,SWEで経過を観察し得た急性発症型の自己免疫性肝炎3例を経験したため報告する.
【症例1】
70歳女性.2015年8月に初診.AST/ALT 302/313U/l,ALP 654U/l,γ-GTP 160U/l,T-Bil 1.41mg/dl,IgG 2857mg/dl,抗核抗体80倍,肝生検所見にてsevere interface hepataitis with bridging fibrosisを認め,自己免疫性肝炎と診断された.肝生検時のSW伝搬速度(Velocity of shear wave; Vs)は1.97m/sであった.診断後にプレドニゾロン(以下PSL)30mg/日の投与を開始した.ALT値が正常化し,PSLを10mg/日まで減量した2015年12月のVsは1.83m/sであった.
【症例2】
26歳女性.2015年5月に初診.AST/ALT 665/995U/l,ALP 618U/l,γ-GTP 103U/l,T-Bil 2.17mg/dl,IgG 1964mg/dl,抗核抗体80倍,肝生検所見ではsevere interface hepataitis with marked bridging fibrosisを認め,自己免疫性肝炎と診断された.肝生検時のVsは1.70m/sであった.PSL35mg/日の投与を開始し,すみやかにALT値は正常化した.PSLを5mg/日まで減量した2015年12月のVsは1.38 m/sであった.
【症例3】
28歳女性.2015年5月に初診.AST/ALT 1377/1538U/l,ALP 375U/l,γ-GTP 180U/l,T-Bil 9.7mg/dl,IgG 1832mg/dl,抗核抗体80倍.意識は鮮明であったが初診時にPT35%と低下あり,自己免疫性肝炎による急性肝不全と判断してメチルプレドニゾロン1000mg/日を3日間投与後に,PSL60mgの投与を開始した.治療開始時のVsは2.28m/sであった.治療開始後,肝機能は速やかに改善した.ALTが正常化してPSLを15mg/日まで減量した2015年10月のVsは1.38m/sであり,同時に施行した肝生検ではinterface hepataitis with mild bridging fibrosisを認めた.
【考案】
当科での検討では正常肝のVsは1.2-1.3m/s程度である.Vsは組織の弾性のみで決まるのではなく粘性にも影響され,急性肝炎の場合は間質への浸出液の増加や細胞浸潤によって組織の粘性が増加してVsが速くなると予測される.今回は急性発症と思われる自己免疫性肝炎3例の経過をSWEで観察し得た.いずれの症例もPSL治療による肝機能の改善に伴いVs値は低下を認めたが正常肝の値には復しなかった.肝生検所見に示されるように症例1と2では発症時から線維化を有しており,症例3は肝機能正常化後も線維化を認めている.以上から自己免疫性肝炎のVsは肝の炎症と線維化の双方を反映するものと推測された.
【結論】
自己免疫性肝炎の場合,急性発症であっても潜行する慢性肝炎や線維化の存在が否定できない.SWEはこの点を解明する一助となり得ると思われ,若干の文献的考察を加えて報告する.